2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J10631
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤下 和浩 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 海外既存RC建物 / 制振改修 / 水平載荷試験 / 遺伝的アルゴリズム / 等価線形化法 / 時刻歴応答解析 / 統合ファサード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では海外の既存RC建物に対する制振改修手法の構築と環境に配慮した統合ファサードの最適形状を明らかにすることを研究の主目的としており,それらの目的に関して得られた研究成果を示す。まず,トルコの既存RC造学校校舎を模した実大に近い1スパンRCフレームを対象とした制振改修の水平載荷実験により提案した制振改修構法の妥当性を示した。また柱にFRPを導入した場合RC架構の損傷がやや低減されることを示した。また実験においては制振部材と圧入したモルタル部材の間に合成効果が生じることにより,想定よりも改修後の試験体の耐力が上昇する現象が見られ,それらをモデル化した解析モデルを設定し実験結果を概ね模擬した。さらに実験により得られた合成効果の力学モデルをもとに,既往の改修設計法の計算式を一部修正することにより,実験を考慮した改修設計法を提案した。次に多層RC架構の制振改修におけるダンパーの最適設計法として,遺伝的アルゴリズム(GA)と弾塑性時刻歴応答解析を組み合わせることで,動的な地震波を想定した際に構造物が制振改修の目標変形を満たすために要する必要ダンパー量を決定する設計法を提案し,その妥当性を確認した。多質点せん断モデルの精度が担保される範囲においては提案最適化手法により1次モード以外の振動成分も考慮した設計が可能といえる。提案手法を用いて得られる最適ダンパー設計解の層方向の分布は入力する地震波の位相特性によらないことを示した。また以前に筆者らが提案した手計算に基づく簡便な設計法による設計解と最適設計解の対応を確認した。さらに環境に配慮した制振改修手法の設計検討として,太陽電池を環境制御要素であるルーバーとして用いた統合ファサード改修におけるライフサイクルアセスメントを行ない,太陽電池ルーバーの発電量と室内空調負荷などの複数の環境指標を考慮した最適なルーバー間隔を求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まずトルコ・イスタンブール工科大学にて,実大に近い1スパンRCフレームと日本で設計施工した耐震改修部材を組み合わせ,トルコの既存RC建物を対象とした制振改修の水平載荷実験を実施した。制振部材を構成する付加弾性骨組と弾塑性ダンパーなど,各部材の影響を考察するため,一部の部材のみを取り付けた試験体など複数の種類の試験体を設定し実験を実施した。また耐震改修の施工方法が改修建物の耐震性能に及ぼす影響を考察するため,制振改修部材を建物の内側と外側それぞれに取り付けた異なる形状の改修試験体を用意した。得られた実験結果から改修部材と既存RC建物および接合部モルタルの部材間の力学モデルを推定することにより,実験結果を解析により再現するための解析モデルの構築を行い,実験結果と解析結果を比較することにより,構築した解析モデルの妥当性を示した。また構築した力学モデルを考慮し,既往の改修設計法における計算式を一部修正した。次に多層RC骨組の制振改修におけるダンパーの最適設計法として,遺伝的アルゴリズム(GA)の一種であるhybrid GAと弾塑性時刻歴応答解析プログラムをFortran上で組み合わせることで,動的な地震波を想定した際に構造物が制振改修の目標変形を満たすために要する必要ダンパー量を決定する最適設計プログラムを構築した。構築したプログラムに置いて複数の観測地震波を対象とした検討を行い,それぞれの入力地震波に対する最適ダンパー設計を導出し,それらを比較分析した。また太陽電池を環境制御要素であるルーバーとして,また弾塑性ダンパーを構造部材として用いた統合ファサード改修におけるライフサイクルアセスメントを行った。ライフサイクルアセスメントにおいては日影シミュレーションを行うことで算出した太陽電池ルーバーの発電電力量と,簡易的な環境シミュレーションにより得られた室内冷暖房負荷を考慮した。
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Strategy for Future Research Activity |
実験で得られた部材の合成効果を建物全体で評価した場合の地震入力時の建物応答に関して分析する。そのため,部材の合成効果を表す力学モデルに関して地震波を入力した時刻歴応答解析で考慮するために,部材の復元力特性としてモデル化する。モデル化に際しては既存のトリリニアの非線形モデルを応用し,パラメータに関しては実験で得られた結果をもとに決定する。モデル化した部材の復元力特性を時刻歴応答解析プログラムに組み込み,得られる応答値に関して分析する。また,建物全体において部材の合成効果がばらついて生じる際の最悪応答値に関して分析する。分析においては,まず前年度に提案した最適化アルゴリズムと時刻歴応答解析を組み合わせた最適設計システムを応用することにより,合成効果がばらついて生じたときに最も応答値が大きくなる最悪ケースを探索するプログラムを構築する。得られた最悪ケースに関する時刻歴応答解析を行い,最悪応答値を分析することにより,既往の改修設計法により設計された建物の耐震性能を確認し,場合に応じて既往設計法の計算式に関して修正を行う。また,既往のダンパーの最適設計法においては,建物を串団子型の多質点モデルで単純化したモデルを用いた検討を行っており,建物層方向のダンパー量の検討に留まっている。したがって,時刻歴応答解析における対象モデルを多質点モデルから建物平面方向の剛性の偏在を考慮した擬似立体モデルに拡張することにより,平面方向のダンパー配置を最適化するシステムを構築し,得られる最適ダンパー設計解に関して分析する。
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Research Products
(7 results)