2015 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経シナプスの可塑性可視化技術を用いた神経疾患発病メカニズムの解析
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15J10702
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 文緒 東京工業大学, 生命理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 神経変性疾患 / TDP-43 / NCad / シナプス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、神経変性疾患のひとつであるALS(Amyotrophic lateral sclerosis)の原因遺伝子であるTDP-43のヒト病気変異型をショウジョウバエの視神経に過剰発現させ、いくつかある代表的な遺伝子変異のうちのある1つにおいて14日間でシナプス・マーカーが消滅するという結果を得ることが出来た。更に3日間、7日間と細かく観察時期を区切って調べたところ、時間経過ごとにシナプス減少の度合いが増すことが分かった。この結果は神経変性疾患の病態でまだ明らかにされっていなかった発病超初期の病態を示唆するものであり、大変有益な結果であると考えている。
さらにこれらのデータをコンフォーカル顕微鏡だけではなく、電子顕微鏡でも解析を行った。それと並行して、シナプス形成に必要であるとされているN-カドヘリン(NCad)のコンディショナル・ノックアウト系統とGFPタグ系統を作成し詳細な観察を行ったところ、NCadが発生後シナプス形成に場所特異的に必要であることが明らかになった。特定の時期におけるNCadタンパク質のノックアウトにより得られた表現形は、NCadがシナプス形成時の細かな神経接続の調節因子となっている可能性を示した。シナプスの形成因子として知られている分子には他にNrxとNlgがある。現在はNCadとともにNrx,Nlgを過剰発現させることでシナプス形成時の更に詳しい 遺伝的相互作用を調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り、主な神経変性疾患のモデルショウジョウバエについてシナプス数の変化の観察を行った結果、TDP-43に関する変異を持ったハエのシナプスに明らかな減少が見られた。そのためTDP-43に関する更なる詳細な解析を行った。すると3日、7日、14日と時間経過に伴ってシナプスが減少していくことが分かった。この時点で神経変性は見られていないことから、シナプスの異常が神経変性疾患の超初期の病態であるという可能性を示唆されると考えている。神経疾患のモデルバエを用いた実験については順調に進んでいる。 病態の緩和にために必要な分子の解析では、NCadの実験を計画していた。当初はノックアウトのみを計画していたが、過剰発現系を作るなどしてさらに発展した実験を行うことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
TDP-43についてはいくつかの変異モデルでシナプス減少の有益な結果が得られたので、電子顕微鏡などを用いて、さらに詳細な解析を行っていく予定である。電子顕微鏡を用いた解析のためには共焦点顕微鏡で用いた神経よりも表層にあり、観察しやすい神経を用いる必要があるが、そのための系の確立をすでに始めている。それと並行して、疾患の進行を遅くする分子の特定も行っていきたいと考えている。前年度の研究でNカドヘリンの過剰発現がシナプス数の増加をもたらすことを明らかにしたので、疾患モデルバエにNカドヘリンを過剰発現させて、疾患症状の緩和を試みたいと考えている。
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Research Products
(4 results)