2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J10722
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
土師 慎祐 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 冷却原子気体 / イオントラップ / 低温化学反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究においては、「単一イオンの振動基底状態冷却」と「イオン・原子間の弾性散乱による冷却効果の観測」の二つの課題に取り組み、良好な研究成果を得ることができた。本研究課題では、「単一イオンによる原子気体の高分解能プロービング」を最終目標として掲げているが、上記の課題はともに目的達成のためのキーポイントとなっている。 単一イオンを原子気体の局所プローブとして利用する際の測定精度は、イオンの空間的広がり、つまりイオンの温度で制限されることとなる。特に光格子中の中性原子は数百ナノメートルという光波長間隔で配置されているため、個々の原子へアクセスするためには、イオンを数ナノメートルの微小空間に局在化させる必要がある。そのため、本研究では“サイドバンド冷却”と呼ばれる冷却技法を用いて更なる低温領域(数十マイクロケルビン)へと準備する。サイドバンド冷却法を機能させるためには、冷却対象となるイオンを予め小さな領域(数マイクロメートルオーダー)に閉じ込めなければならない。今年度の研究では、まず強い閉じ込めを実現するためのトラップ装置の設計、開発に行った。次に、開発されたトラップにてイオンを捕獲し、冷却のために必要となるレーザー光を照射し、冷却効果の検証を試み、単一イオンを25マイクロケルビンという温度領域(ほぼ振動基底状態)へと準備することに成功した。これは、空間的な広がりに換算すると7ナノメートル程度となる。 さらに、本年度後半の研究では、単一イオンと原子気体とを直接コンタクトさせたときのkineticsについて詳しく調べ、原子との衝突による冷却効果がイオントラップ中の加熱を上回る条件においては、イオンの運動エネルギーが時間とともに減少するような挙動が観測された。これはイオンと原子の協同冷却といった新しい冷却技術への応用の足掛かりとなると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究において、高分解能な原子プロービングに必要となる「サイドバンド冷却」が達成されたことを主たる理由として、”おおむね順調に進展している”という自己評価に至った。 サイドバンド冷却を実現するためには、高安定なレーザー光(周波数線幅に換算してキロヘルツ以下のもの)の開発が必要となる他、単一イオンを安定的かつ強く束縛するためのイオントラップ構造の実装等、の様々な技術課題をクリアしなければならない。そういった点を一つずつ解決し、年度目標としていた振動基底状態冷却ができたことは大きな成果と考えられる。 なお、この他にも近年大きな注目を集めている”イオンと原子間の協同冷却”に関する研究にも着手し、冷却効果の観測結果が得られたことも新たな進展であると考えられ、最終年度の研究課題への準備が整ったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては”冷却原子の光格子ポテンシャルへの導入”と”単一イオンを用いた原子密度の測定”を予定している。より具体的には、単一イオンの位置を印可された静電場により精密制御し、各イオン位置での原子・イオン衝突レートを測定することで原子密度の再構築を行うことを考えている。 現時点で主たる実験装置の開発、イオンや原子の状態準備のための手法の大部分はすでに確立済みであるので、スムーズに測定実験へと移行できると期待できる。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] Characterization of ultracold collisions between laser-cooled 6Li atoms and 40Ca+ ions2017
Author(s)
M. Sasakawa, R. Saito, S. Haze, R. Nakai, M. Raoult, H. Da Silva Jr., O. Dulieu, T. Mukaiyama
Organizer
The fourth MIPT-LPI-UEC Joint Workshop on Atomic, Molecular, and Optical Physics
Place of Presentation
University of Electro-Communications (Tokyo, Chofu)
Year and Date
2017-03-25 – 2017-03-29
Int'l Joint Research
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