2016 Fiscal Year Annual Research Report
環境ガバナンスの社会学的再検討：「意図せざる結果としての環境保全」の有効性
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15J10735
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| Research Institution | Nagoya University |
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Principal Investigator |
谷川 彩月 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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| Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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| Keywords | 環境と農業 / 環境社会学 / 環境保全型農業 / 宮城県 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、前年度に引き続きフィールド調査を精力的に行った。具体的には、調査対象地である宮城県登米市にて、JAみやぎ登米への聞き取り調査や、環境保全型農業の1類型である「環境保全米」の生産に取組んでいる農家への聞き取り調査を行った。聞き取り調査を行った人数は30人を超え、得られた情報の体系化が可能となりつつある。農家への聞き取り調査によって明らかとなってきた環境保全米への取り組み動機には、当初から想定していた経済的動機や環境配慮的な動機も存在したが、当初は想定していなかった、「本来の米作りのあるべき姿を取り戻したい」という第3の要因が、一部の農家に通底する動機としてみられていた。本研究は当初から質問紙調査を予定していたが、このような研究当初には想定しえなかった要因が発見されたことにより、今後行う予定である質問紙調査の精度がより高まったといえる。
また、今年度は環境保全米の生産を担う農家だけでなく、環境保全米の認証団体であるNPO環境保全米ネットワークにまで調査対象を拡大した。これによって、環境保全米が誕生した歴史的経緯が明らかとなり、前年度からの研究内容であった「いかにしてJAとNPOとの協働は成立したのか」ということが明らかにできた。
今年度は以上のフィールド調査をもとに、学外での発表を積極的に行った。具体的には、学会発表を2回行い、論文も2本投稿した。論文は2本とも現在査読中であるが、これら2本の論文が受理されれば博士論文の執筆要件を満たすこととなり、学位の取得が現実的なものとなる。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はおおむね研究計画通りに研究を進捗させることができた。前年度と同様に、フィールド調査を精力的に行ったほか、前年度にはできなかった学会報告や論文投稿を複数行うことができた。学会報告では有益なコメントを得ることができ、本研究の理論的枠組みをより深化させることができた。
また、文献調査も前年度より引き続き行ってきたが、これにより、調査対象地との比較が可能な複数の地域を発見することができた。さまざまな地域と比較することで、調査対象地の特徴をより明確化することができ、事例の一般化を進めることができた。さらに、文献調査の幅を社会学だけでなく農学や農業経済学、農業経営学にまで広げたことによって、本研究の学際的な位置づけを想定することが可能となってきた。
今年度は、本研究の理論枠組みを確立させることができた。前年度の課題として残っていた海外の文献レビューも順調に進みつつある。前年度から、国内における本研究の位置づけは明確であったが、今年度の文献レビューによって海外の研究潮流における本研究の位置づけもまた明確化できた。
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| Strategy for Future Research Activity |
今後は、博士論文の作成に本格的に取り組んでいく予定である。今年度までの調査によって調査対象地でのデータ収集はおおむね終わりつつある。論文の骨子はすでに固まりつつあるので、今後は量的調査や他地域との比較などを組み込みつつ、それを肉付けしていく作業に入る。
また、博士論文を完成させるためにも、本研究の理論的な枠組みをより精緻化していく予定である。本研究は、地域環境保全の現場として水田を設定しており、農村研究と環境ガバナンス研究を架橋しうる。このような利点を持ついっぽうで、これまでの日本の農村研究では地域環境保全を真っ向から扱った論考は少なく、国内での既存の研究蓄積をそのまま本研究に当てはめることはできない。海外の知見を応用しながら、本研究の国内での位置づけ、ひいては海外の研究潮流内での位置づけを明確にしていく作業を行っていく予定である。
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Research Products
(2 results)
