2015 Fiscal Year Annual Research Report
犬輪部由来上皮細胞株の増殖維持機構の解明と他家移植による角膜再生療法への応用
Project/Area Number |
15J10878
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 希輔 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 増殖能維持 / 細胞株 / 角膜上皮細胞 / 犬 |
Outline of Annual Research Achievements |
はじめに犬の輪部由来角膜上皮細胞が増殖能の維持に優れていることを示すため、ウサギの細胞との増殖能の比較を行った。犬とウサギの輪部由来角膜上皮細胞を、増殖因子およびフィーダー細胞を用いない細胞増殖に不利な条件下で培養したところ、犬の細胞はウサギの細胞に比べ有意に細胞数が多く、また細胞増殖マーカーであるKi67陽性細胞率も有意に高かった。両動物種の細胞を同じく増殖因子およびフィーダー細胞を用いない条件下で連続継代に供したところ、ウサギでは全ての細胞が初代培養もしくは第1継代で増殖停止したのに対し、犬では約半数(47.8%)の細胞で10継代以上の維持が可能であった。以上より、犬輪部由来角膜上皮細胞は増殖能の維持に優れ、何らかの自己増殖能維持メカニズムを有することが示唆された。 次に、先ほどの条件下で100継代以上維持した犬輪部由来角膜上皮細胞の性状解析を実施した。初代培養から第100継代まで細胞形態に大きな変化はなく、この間角膜上皮幹・前駆細胞マーカーであるp63およびK15の発現が維持されていた。また100継代以上の細胞ではp63とK15、角膜上皮細胞マーカーであるK3の発現が認められた。染色体数は78本(犬の正常数)から82本まで分布しており異数性を示したものの、他動物種における長期培養と比較して非常に安定していた。さらに100継代以上の細胞を用いて3~5層に重層化した細胞シートの作製が可能であり、シート基底層にp63とK15、中間層から表層にK3の発現が認められ、これは第1継代細胞で作製した細胞シートと同様の発現パターンであった。以上より、100継代以上の細胞においても角膜上皮前駆細胞の性質が維持されていることが明らかとなり、他家移植のセルソースとして利用可能な犬輪部由来角膜上皮細胞株の樹立に成功したと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞株を用いたシート作製方法の条件検討に時間を要したため、本年度中に開始する予定であった犬角膜損傷モデルへのシート移植が次年度に持ち越しとなった。またモデル動物の作製手技は確立できたが、移植実験の予備的検討を行っている段階である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、細胞株の性状解析の追加としてコロニー形成能および足場非依存性増殖能の評価、また自己増殖能維持メカニズム解明のため犬角膜上皮細胞が自己分泌している因子による増殖促進作用の有無に関する検討を進めている。さらに犬角膜損傷モデルに対する細胞株由来の角膜上皮細胞シートの移植による安全性・治療効果の検討を開始する予定である。
|