2016 Fiscal Year Annual Research Report
犬輪部由来上皮細胞株の増殖維持機構の解明と他家移植による角膜再生療法への応用
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15J10878
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 希輔 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 犬 / 角膜上皮細胞 / 増殖能維持 / 細胞株 / 細胞シート / 角膜損傷 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、犬輪部由来角膜上皮細胞株の性状解析の継続として、コロニー形成効率および足場非依存性増殖能の評価を行った。本細胞株は初代培養細胞よりも高いコロニー形成能を有しており、一方軟寒天ゲル上ではコロニーの形成はなく、足場非依存性の増殖は認められなかった。前年度までの結果と合わせ、本細胞株が角膜上皮前駆細胞の性質を維持していること、また腫瘍性を認めず細胞シートの作製が可能であることから、角膜損傷をはじめとする眼表面疾患に対する移植材料として本細胞株を利用できると考えられた。 次に、犬輪部由来角膜上皮細胞の自己増殖能維持機構を探るため、液性因子に着目した検討を行った。細胞増殖に関与する液性因子の自己分泌能を評価するため、犬輪部由来角膜上皮細胞株および初代培養細胞の培養上清をウサギ輪部由来角膜上皮細胞に添加して培養し、ウサギの細胞数を計測したところ、犬細胞株の培養上清添加でウサギの細胞の増殖が有意に促進され、犬初代培養細胞の培養上清でも増殖促進傾向が認められた。同様の評価を、ウサギの細胞の培養上清を犬の細胞に添加した場合でも行ったところ、犬の細胞の増殖が抑制された。以上より、犬輪部由来角膜上皮細胞が増殖促進因子を自己分泌している可能性、あるいは増殖抑制因子の自己分泌を欠如している可能性が考えられた。続いてcDNAマイクロアレイによる、犬およびウサギの輪部由来角膜上皮初代培養細胞の網羅的遺伝子発現解析を行った。発現量の差が2倍以上ある液性因子を抽出したところ、犬では22遺伝子、ウサギでは12遺伝子が該当した。犬で高発現していた因子にはNRG1、HBEGF、EREG、EPGNといったEGF受容体ファミリーのリガンドが含まれており、HBEGFとEREGには角膜上皮細胞の増殖促進作用が報告されていることから、これらの因子による増殖能維持への関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
犬輪部由来角膜上皮細胞の増殖能維持機構に関わると考えられる候補因子が明らかとなり、研究は計画通り進展している。一方、犬角膜損傷モデルへの細胞シート移植は、移植手技確立のための予備的検討に時間がかかり、やや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、qPCRによるcDNAマイクロアレイ結果の検証を進めており、今後、阻害薬やRNAiを利用したEGF受容体リガンドの抑制による細胞増殖への影響について評価を行う予定である。また犬角膜損傷モデルに対する細胞株由来の角膜上皮細胞シートの移植についても、無縫合による移植手技を確立し、現在実験を進めている。
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