2015 Fiscal Year Annual Research Report
政策効果分析における分位点処置効果の識別と推定:理論と実証
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15J10927
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
崔 庭敏 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 分位点処置効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
操作変数を用いた分位点処置効果の部分識別手法の開発と、この手法を応用した、雇用形態が 就業状況および収入に与える効果の実証分析という目的に向け、今年度は、先行研究の調査と 問題点の整理を行った。具体的には以下の通りである。 Abadie,AngristandImbens(2002)では、処置に自己選択が働く場合など、観測されない変数が処置に影響を与えている可能性がある場合、操作変数によって行動に影響を受ける部分集団について、処置効果を点識別する方法を示している。しかし、誰が当該部分集団に属するかを特定できないため、政策上の意義があいまいであるという問題がある。そこで、この部分集団についての結果を、母集団についての処置効果識別に利用することを考える。 操作変数を用いた平均処置効果の部分識別においては、母集団の期待値は、繰り返し期待値の法則を用いて、操作変数に対する反応によって条件づけた期待値の期待値によってあらわすことができる。しかし、分位点処置効果の場合は、条件付分位点と条件のない分位点の間にそのような単純な関係がないため、どのようにして条件付分位点についての情報を母集団の分位点の識別に利用するかが問題である。これまでの調査から、Giustinelli(2012)、OkumuraandUsui(2014)らの手法が応用できると予想している。 また、個人の就業状況は、過去の就業状況の影響を受けると考えることが自然であることをふまえ、確率過程として分析する方法を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、既存の処置効果分析についての研究を調査した。また、数理生物学に使われる確率過程モデルおよび力学系モデルを労働市場に応用する可能性に着目し、米国ウィスコンシン大学マディソン校にて資料収集と数理生物学研究者との議論を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に加え、数理生物学に使われる確率過程モデルおよび力学系モデルを労働市場に応用することを検討する。統計センター等を通じて匿名データの利用を申請し、本格的に実証分析にとりかかる。
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