2015 Fiscal Year Annual Research Report
姉妹染色分体間接着因子コヒーシンによる遺伝子発現制御メカニズムの解明
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15J10948
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋山 和広 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | コヒーシン / コヒーシンローダー / 転写制御 / In vitro |
Outline of Annual Research Achievements |
コヒーシン(姉妹染色分体間接着因子)は、染色体接着に関わる基本機能以外にも、DNA修復や相同組み換え等の様々な生命現象に関わっていることが知られている。その中でも特に、コヒーシン及びコヒーシン制御因子が遺伝子の発現制御に密接に関わっていることが近年の研究により明らかとなりつつある。しかしながら、多段階的に、且つ緻密に制御されている転写反応のどのステップにおいて、コヒーシンやコヒーシン制御委因子が転写制御に寄与しているかという具体的な作用機序は未だに不明である。更に、コヒーシン病として知られるCdLS(コルネリア・デ・ランゲ症候群)は、主にコヒーシン制御因子(コヒーシンローダータンパク質)の変異に伴う転写制御の異常に起因すると考えられているが、その発症メカニズムは依然として不明である。そこで、本研究では、様々な転写関連因子の転写制御機構を評価するために用いられてきたin vitro 転写反応系に着目し、この実験系を再構築及び応用することで、コヒーシンやコヒーシン制御因子による転写活性能を評価する新規アッセイ系の構築、及びその転写制御機構のより詳細な解明を行うことを目的としている。現在までにin vitro転写反応系の構築に成功しており、また同時にこの系を用いて、転写活性化時にコヒーシン及びコヒーシン制御因子が遺伝子プロモーター近傍にリクルートされることが明らかとなっていた。更に転写伸長阻害により、コヒーシン制御因子がプロモーター近傍で過剰に蓄積するという現象をとらえることが出来た。今後は。コヒーシンやコヒーシン制御因子が実際に転写のどの因子に直接的に働きかけ、それらのタンパク質の非存在下ではどの様な影響が出るか等の疑問に対して、より詳細に調べていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)In vitro 転写開始前複合体(PIC)形成反応系の確立及び実験結果の安定化 In vitroにおいてPIC形成反応をタンパクレベルで観察することが可能になった。しかしながら、アッセイに用いる核抽出液のロット間による転写活性に差が見られることがあり、実験結果の評価が困難なことが多々あった。現在では、細胞数を増やしたり、回収の方法を変える等、試行錯誤を重ねたことにより、少しずつではあるが実験系の安定化が認められるようになっている。 (2)In vitro 転写産物測定(mRNA合成)系の確立 自身で回収した核抽出液の転写活性を調べるために、過去の転写研究で比較的頻繁に用いられていたG-Less cassetteという特殊な配列を組み込んだプラスミドを用いて、核抽出液の転写活性化能を比較することが可能になった。 (3)転写反応におけるコヒーシン及びコヒーシンローダーの相互作用因子の同定 HeLa細胞核抽出液を用いて、コヒーシン及びコヒーシンローダーが転写活性化時にどの様な因子と結合するかをLC-MS/MSを用いて解析した。すると、特に転写活性化時において、コヒーシンローダーは転写メディエーター複合体や転写伸長因子と相互作用する可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
前述で示したアッセイ系を利用するにあたって、定期的に核抽出液の回収及びクオリティの確認作業を行いつつ、核抽出液に変異タンパクを加えるなどの改良を加えたり、テンプレートDNAの改変やアクチベータータンパクの改変をしたり、更に可能であればCdLS患者蔡瑁等、他の細胞種を取り扱いたいと考えている。それに加え、より生理的条件下に近づけるため、ヌクレオソーム再構成系の導入にも着手するつもりである。方法としては、in vitroにおいて塩濃度を段階的に下げることにより、HeLa細胞から精製したヒストン八量体にDNAを巻き付かせ、ヌクレオソームを形成させるという実験である。少しでも生理的条件下に近づけ、今までに確立したin vitroのアッセイ系に応用させていきたいと考えている。 また、コヒーシン及びコヒーシンローダーと相互作用する転写制御因子の探索にあたって、コヒーシンローダーと転写メディエーター、転写伸長因子が同定されたが、実際にコヒーシンローダーのどの領域で結合し、どのタイミングで外れたり、化学修飾を含め、どのような制御を受けているかといった詳細なメカニズムは不明である。そのため、今後はコヒーシンローダーの断片を作製し、相互作用部位を特定するとともにその作用機序や生理的意義を解明していきたいと考えている。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Esco1 Acetylates Cohesin via a Mechanism Different from That of Esco22015
Author(s)
Masashi Minamino, Mai Ishibashi, Ryuichiro Nakato, Kazuhiro Akiyama, Hiroshi Tanaka, Yuki Kato, Lumi Negishi, Toru Hirota, Takashi Sutani, Masashige Bando, Katsuhiko Shirahige
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Journal Title
Current Biology
Volume: 25
Pages: 1694-1706
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Book] 細胞工学2015
Author(s)
坂東優篤,秋山和広,白髭克彦
Total Pages
5ページ
Publisher
学研メディカル秀潤社