2015 Fiscal Year Annual Research Report
世界文学・映像作品におけるブエノスアイレス表象-外部から仮託されるイメージの諸相
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15J11013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 美雪 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ブエノスアイレス / アルゼンチン / 都市表象 / 記憶 / 地図 / 亡命文学 / 世界文学 / トマス・エロイ・マルティネス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、世界の文学・映像作品における、表象としての都市ブエノスアイレスのありようを明らかにしようとするものである。具体的には5つのテーマ(1.「憧憬」2.「中継地」3.「饗宴」4.「変容する地図」5.「潜航~「私」へのノスタルジア」)を設定し、各イメージ毎に、時代と言語圏を横断しながら作家・作品の分析を行う。
本年度上半期には、まずポルトガル共和国リスボン大学にて、世界文学研究を巡るワークショップ"Institute for World Literature"に参加し、本研究の基盤となる「比較」と「亡命文学」についての知見を広げると共に、研究計画について各国の専門家より意見を頂いた。またリスボン市内各機関にて、テーマ5で扱う作家アントニオ・タブッキと「サウダーデ」の概念、アルゼンチン-ポルトガル間移民史に係る調査を集中的に行った。
下半期には、上記ワークショップで示唆を受けた事項を鑑み、また年度開始後に開催が判明した研究大会参加を考慮に入れ、テーマ4で扱うアルゼンチンの亡命作家トマス・エロイ・マルティネスについての考察を、前倒しして実施した。成果として、平成28年1月には、他のアルゼンチン亡命作家との間テクスト性に着目しながら、四次元の地図としてのマルティネスのブエノスアイレス像を考察した口頭発表を行った。一方、研究を進めるにあたり、同作家のより広範なテクストを検証する必要が明らかになった。 これを踏まえ、同年2月から3月にかけてアルゼンチン共和国で調査を行い、TEM財団、各図書館にて、マルティネスの未発表の草稿や初期の記事を参照した。これらを通じて、記者時代から軍政下亡命期、晩年に到るまでの著者のアルゼンチン像の変遷を、より包括的に検討することが可能となった。他の4テーマについても諸機関で調査・資料収集を行い、研究者、映像作家らと知己を得、貴重な証言を得た。成果の一端として、テーマ3,4に係る発表を次年度に予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、上半期にワークショップで得られた知見や研究計画に頂いた指摘を鑑み、また年度開始後に開催が発表された研究大会への参加を考慮し、取り掛かるテーマの順序を当初の計画より一部変更した。これに伴い、渡航調査についても検討のうえ、リスボンとブエノスアイレスにて集中的に行うこととした。結果として、当初は来年度に実施する予定であったテーマ4の研究が大きく進展を見た他、各テーマに係る資料収集について、想定を超える成果を得ることができた。
一方で、分量、分野の規模ともに広範な資料が得られた分、その読み込みや分析・文章化には当初計画していたよりも時間を要することとなった。次年度以降は引き続き丁寧に読解を行うと共に、考察の論文化を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、まず口頭発表を元にテーマ4について論文を完成させること、本年度に国内外で収集を行った資料の読み込みと考察を進め、テーマ1,3,5について口頭発表および論文としてまとめることを課題とする。当初の予定のとおり、テーマ2,3の一部についても、対象とするヨーロッパ出身の作家・作品に関する現地調査を含む調査・資料収集を行い、読み込みを進める。これらの過程を通じて、全5テーマに関して成果を発信することを目指す。
研究遂行にあたっては、より広範な資料や視座が得られるに伴い、論点が散漫になる恐れがあると感じている。引き続き一つ一つの資料を丁寧に読み込むと共に、思考や論述にあたっては、研究全体および各テーマの鍵となる概念を見失うことなく、テーマ間の連関に絶えず留意しながら研究を進めたいと考える。
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Research Products
(1 results)