2016 Fiscal Year Annual Research Report
記憶と忘却の映画的身体―占領期/ポスト占領期におけるスター俳優と観客の視覚文化史
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15J11024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北村 匡平 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | スター女優 / ファン雑誌 / GHQ / 検閲 / メディア / 大衆文化 / 占領期 / 世代 |
Outline of Annual Research Achievements |
学術論文に関しては、前年度、研究発表したものを論文化し、日本映像学会の学会誌『映像学』(96)、日本マス・コミュニケーション学会の学会誌『マス・コミュニケーション研究』(90)、表象文化論学会の学会誌『表象』(11)に査読付き論文として掲載された。また他にも掲載日は未定だが査読を通過した論文が1本ある。学会誌の論文以外に、中国紙『文匯報』(上海)から戦後日本における反戦映画の変遷に関する論考を依頼され寄稿した(2017年2月22日)。また黄金期の映画関係者のインタビューを実施しており、本年度は篠田正浩氏、岩下志麻氏、司葉子氏にお話を伺い、その成果は都留文科大学の『都留文科大学研究紀要』(84集)、「都留文科大学研究紀要』(85集)、早稲田大学演劇映像学会の『映像演劇』(58号)に掲載された。
学会発表に関しては、2017年3月22日から26日にアメリカのシカゴで開催されたSociety for Cinema and Media Studiesで、戦中の国策映画や商業映画のなかで原節子が戦前のモダニズムをいかに継承し、戦後に欲望される戦後民主主義の女性像を提示していたかを発表した。
資料調査は、国内では国会図書館や早稲田大学演劇博物館、川喜多記念映画文化財団、松竹大谷図書館で製作側のプレスシートなどを中心に収集し、国外ではアメリカ国立公文書館で、アメリカの戦時情報局の映画製作に関する資料やCIE映画に関わる映像資料を調査した。以上、論文執筆、研究発表ともに順調に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、学会誌の査読論文が3本掲載され、研究成果として公開できたことが計画以上の進展であった。また他にもすでに投稿し査読を通過していることからも、本年度はこれまで蓄積してきた知識や資料をアウトプットできたことが博論執筆へ向かうための大きな成果であった。
資料調査に関しても、前年度は受け手に特化した資料であるファン雑誌を中心に調査していたが、本年度は送り手側の資料であるプレス資料を多く収集できた。アメリカ出張の際には、占領製作の映像政策において大きな役割を担ったCIE映画をかなり視聴し、アーカイブ資料を入手することができた。これらは送り手側の資料としてきわめて重要なもので戦後日本の映像文化を考える上で必須の資料体である。またアメリカの映像政策を戦後からいきなり始まったものではなく、戦中・戦後の連続性のなかで捉える必要があると考え、戦時情報局(OWI)からGHQにいたる資料を集めている。本年度は主にアメリカ国立公文書館でOWIの資料を集めることができた。
発表に関しては、幸運にも前年度に引き続き、Society for Cinema and Media Studiesで発表する機会を得た。スター女優である原節子が占領期にスターダムの頂点へと祭り上げられた要因を戦中に呈示していた女性イメージの規範からの逸脱、言説構築に求め、モダニズム的感性と占領期の戦後民主主義の連続性について発表した。以上、学会誌における論文発表と国際学会における発表から研究成果を考え、本年度の目標を計画以上に達成できたと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、国内の調査では、早稲田大学演劇博物館、国立国会図書館を中心に資料が乏しい1950年代後半の資料を調査すると同時に、映画館関係者のインタビューも継続したい。またメリーランド大学の司書の方々とのスケジュールの関係から本年度は伺えなかったが、来年度は予定を調整し、すでに予備調査済みであるプランゲ文庫の資料へとアクセスしたい。
論文執筆に関しては、これまで学会誌の査読付き論文を査読通過のものもふ含め6本書くことができたので来年度はSociety for Cinema and Media Studiesの学会誌であるCinema Journalか他の英語の学会誌に投稿するための論文を執筆したい。またこれまでの研究成果を博士論文としてまとめる作業も遂行していく。
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Research Products
(7 results)