2015 Fiscal Year Annual Research Report
位置選択的炭素―炭素結合開裂反応を基盤とした新規有機合成方法論の開発
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15J11072
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
服部 倫弘 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 炭素炭素結合開裂 / 位置選択的 / パラジウム炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、不均一系遷移金属触媒存在下、反応条件のわずかな違いを利用することで、ジヒドロけい皮アルコールからスチレン、エチルベンゼン、ベンズアルデヒド、安息香酸そしてベンズニトリルを選択的に合成する反応の確立を目指している。スチレン、エチルベンゼン及びベンズアルデヒドの合成では、いずれもけい皮アルデヒドを中間体として経由していることを既に明らかにしている。本年度は、けい皮アルデヒド類を原料とした炭素―炭素結合開裂反応の最適条件を探索した。その結果、酸素雰囲気下、10% パラジウム炭素を触媒としてけい皮アルデヒドを炭酸ナトリウムとともに2-プロパノール中24時間攪拌することで、スチレンが76%の収率で単一生成物として得られることが分かった。この反応条件は様々なけい皮アルデヒド誘導体の炭素―炭素結合開裂反応に適用可能であり、芳香環の電子的性質に関わらず効率よくスチレン誘導体に変換できることが明らかになった。また、開裂反応後の試験管内の気体を検知管で確認したところ、一酸化炭素が脱離していることが明らかとなった。現在、系内で発生した一酸化炭素の有効利用に向けた検討にも着手している。 スチレン合成の場合と同様に、けい皮アルデヒドから効率的にベンズアルデヒドを合成するための反応条件(添加剤や溶媒、反応温度)を探索した。その結果、スチレンの合成と類似した反応条件で添加剤を炭酸ナトリウムから塩化銅(Ⅰ)とモルホリンに変更し、100 ˚Cで24時間攪拌することでベンズアルデヒドを単一生成物として合成することができた。以上、けい皮アルデヒド類から選択的にスチレン誘導体とベンズアルデヒド誘導体を作り分ける反応を確立し、これらの結果はJ. Org. Chem. 2016, 81, 2737に詳報として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではジヒドロけい皮アルコールからスチレン、エチルベンゼン、ベンズアルデヒド、安息香酸そしてベンズニトリルを選択的に合成する反応の確立を目指している。反応温度や添加剤の種類について様々な反応条件で検討を重ねた結果、現段階でジヒドロけい皮アルコール類からの炭素―炭素結合開裂反応は効率良く進行していない。そのため、中間体であるけい皮アルデヒドを基質として検討を進めている。基質の変更が必要であったが、けい皮アルデヒド誘導体からスチレン誘導体とベンズアルデヒド誘導体を高収率で作り分けることに成功し、添加剤の種類に依存したけい皮アルデヒド類の炭素―炭素結合開裂反応として論文化することができた。また、スチレン合成反応の過程で一酸化炭素が脱離していることが明らかとなっており、現在、系内で発生した一酸化炭素の有効利用に向けた検討にも着手している。具体的には、脱離した一酸化炭素を芳香族ハロゲン化合物のカルボニル化反応に利用することで、有毒な一酸化炭素ガスを使用しない反応として確立できるものと考えている。以上、基質のマイナーチューニングにより同一基質からの二種類の選択的炭素―炭素結合開裂反応を確立することができ、それを初年の成果として学術論文(J. Org. Chem. 2016, 81, 2737)に発表した。さらに、遂行中の反応検討から新たな反応の芽を発見できた点から「おおむね順調に進行している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在はジヒドロけい皮アルコールを基質とした安息香酸誘導体、ベンゾニトリル誘導体の合成を中心に取り組んでいる。現在の検討段階で、安息香酸およびベンゾニトリルがそれぞれわずかな収率ではあるが生成されることをつかんでいる。今後、溶媒の種類や塩基の種類、反応温度などの反応条件を精査することでさらなる反応効率向上を目指す。また、それぞれの反応について反応機構が分かっていない。そのため、ラジカル補足剤の添加により、反応の影響を確認し、本反応におけるラジカルの関与を明らかにする。また、副生成物が得られた場合には、構造を同定し、反応機構解明につなげる。 さらに、けい皮アルデヒド類の脱ホルミル反応からスチレン誘導体の合成反応生成物であるスチレン誘導体と一酸化炭素を有効利用するための検討を実施する。これまでに、スチレン生成後の反応液にヨードベンゼンを添加するとHeck型のクロスカップリング反応が進行し、対応するジフェニルエテン誘導体が高収率で得られることが明らかとなっている。今後反応温度やハロゲン化アリールの当量を検討することでジアリールエチレンの一般合成法としての確立を図る。また、けい皮アルデヒドから一酸化炭素を発生させた試験管に2-ヨードベンジルアルコールを添加すると、環状ラクトンが生成することも分かっている。今後反応条件を精査して、芳香族ハロゲン化合物のワンポットカルボニル化反応を確立する。
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Research Products
(1 results)