2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J11096
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牛場 崇文 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | レーザー / 光共振器 / 量子雑音 / 標準量子限界 / 輻射圧 / 光学浮上 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標を達成するには光の輻射圧力を利用して高反射率鏡を浮上させることにより、振動子を量子的な状態にする際に妨げとなる振動子の支持伴う熱雑音を原理的になくした支持系を構築し、ミリグラムスケールの振動子を量子的な状態で駆動する必要がある。 そのための手法として我々は「サンドイッチ構成」という新たな実験セットアップを提案し、そのセットアップの構築を行っている。この「サンドイッチ構成」では、先行研究で提案された手法に比べて「浮上鏡上でのビームスポットが一点のみとなる」点や「全体で使用する光の数を半分以下に減らすことができる」点で有利であり、先行研究に比べてコンパクトで簡易なセットアップを構築できることが期待される。 平成27年度はこの「サンドイッチ構成」の安定性の原理検証を行うための準備を行った。サンドイッチ構成の安定性の原理実証は実際に浮上させる高反射率の微小鏡の代わりに、ねじれ振り子の一端に通常のハーフインチ鏡を取り付けたセットアップを使用することで行う。これにより取り扱いの困難な微小鏡を用いずに実効質量をミリグラム程度まで低減した鏡を準備することが可能である。また、ねじれ振り子のねじれ方向の復元力は非常に小さくすることが可能なため、光の輻射圧力による微小な復元力を測定することが可能である。 具体的にはねじれ振り子を用いたサンドイッチ構成の安定性の原理検証セットアップの設計・製作を行い、セットアップを構築した。また、原理検証のための予備測定として、構築したセットアップの光学的な特性や機械的な特性の測定を行い、それらの特性が原理検証に必要な要求を満たすことを確認した。さらに、実際に光共振器やねじれ振り子を制御することにより、浮上鏡の上下の共振器が同時にロック可能であることや、ねじれ振り子の振動レベルを共振器のロックに十分な大きさまで抑えることができることも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において我々が提案した「サンドイッチ構成」が実験的に安定であることを確認することは本研究を遂行する上で非常に重要なステップである。特に、浮上鏡の水平面内の運動に対する安定性は、「サンドイッチ構成」特有の復元力によって安定性を確保しているため、実際に安定であることを実験的に確かめる必要があり、平成27年度は安定性の原理検証に向けた実験・開発を行った。 原理検証のためのセットアップとして、ねじれ振り子を用いたセットアップを考案し、その製作・組み立て・性能評価等を行った。作成したねじれ振り子は共振周波数が10 mHz程度と非常に小さく、ワイヤーの機械的復元力が小さい。そのため、光の輻射圧力による復元力がワイヤーの機械的復元力よりも大きくなるようなセットアップを容易に構築することができる。このようなねじれ振り子の一端に高反射率の鏡を張り付けたものを準備し、「サンドイッチ構成」の原理検証に必要なねじれ振り子の開発が完了した。また、作成したねじれ振り子に取り付けた鏡の上下にも鏡を配置し、「サンドイッチ構成」と同様のセットアップの光共振器を構築した。さらに、これら2つの共振器にレーザー光を干渉させることにより、上側共振器と下側共振器の同時制御が可能であることが確認できた。これにより「サンドイッチ構成」が光学的に安定な構成となっていることを示した。また、光共振器の制御のためには鏡の位置変動を0.01 mm程度以下まで小さくする必要がある。そのため、フォトセンサおよびコイルマグネットアクチュエータを使用した鏡の位置制御を導入した。これにより、鏡の変位をRMS振幅として0.01 mm以下まで低減することができ、共振器の制御に十分な振動レベルまで低減できていることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は「サンドイッチ構成」の原理的安定性を確かめるための実験の準備を行って、ねじれ振り子の開発・光学的安定性の確認・鏡の変位制御を行った。したがって、平成28年度はこれらの開発したものを組み合わせることにより、「サンドイッチ構成」の安定性の原理検証を行う。 具体的には開発したねじれ振り子の変位制御を行った状態で光共振器を共振状態に制御することにより、ねじれ振り子の共振周波数が変化することを確認する。これによってねじれ振り子の共振周波数が高くなることが確認できれば、「サンドイッチ構成」が安定であることを実験的に確認できたことになる。 その後、原理検証に用いたねじれ振り子の代わりに浮上鏡を使用することによって、鏡を光の輻射圧力によって実際に浮かせるということを行う。これを実現することにより、本研究の重要なステップである、振動子の支持に伴う熱雑音を原理的になくした振動子を実現することが可能となる。 その後、レーザーの強度安定化や周波数安定化などを行い、熱雑音以外の古典雑音も低下することにより浮上鏡が光によって量子的に駆動されている状態を達成する。
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