2015 Fiscal Year Annual Research Report
脂質分子をキャリアとしたDNA被覆ナノ粒子の2次元結晶化および構造制御
Project/Area Number |
15J11113
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
磯貝 卓巳 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 脂質二重膜 / ナノ粒子 / DNA / セルフアセンブリ / 2次元結晶化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、DNA被覆ナノ粒子を脂質二重膜上で拡散させることで、ナノ粒子の2次元結晶を作製する。そして、ナノ粒子に被覆されているDNAによって粒子間距離や粒子間相互作用を変化させ、結晶構造を制御し、粒子間距離および粒子間相互作用と結晶構造の関係を解明する。さらに、脂質二重膜の性質を利用して2次元結晶の核形成サイトを制御し、配向の揃ったナノ粒子の2次元結晶を作製することを目的としている。 2次元結晶の構造制御に関しては、ナノ粒子の結合を担うDNAの相互作用や立体構造に影響する陽イオンを添加することで、粒子間距離が減少した。粒度分布計によりDNA被覆ナノ粒子の粒径の陽イオン濃度依存性を測定したところ、DNAが陽イオンによって収縮することがわかった。よって、粒子間距離の減少は、DNAの収縮により起こったと考えられる。さらに、5 mM以上の酢酸マグネシウムを含む溶液内では、正方格子構造もつナノ粒子の2次元結晶が形成した。これは、マグネシウムイオンによりDNAが束ねられる「バンドル化」により、最近接粒子数が減少したためだと考えられる。この結果から、DNAの塩基配列を変えなくても陽イオンを添加するだけで結晶構造が変化することが明らかになった。 次に、配向の揃ったナノ粒子の2次元結晶を作製に向けて、DNA被覆ナノ粒子の拡散を担っているDDAB脂質二重膜の相転移過程を蛍光顕微鏡と原子間力顕微鏡で観察した。その結果、冷却過程でゲル相と指組みゲル相という2つの相が観察された。さらに、DNA被覆ナノ粒子が指組みゲル相に優先的に分配されることがわかった。当初の計画では、長時間の熱処理により2次元結晶の配向を揃える予定であったが、DNA被覆ナノ粒子が指組みゲル相に優先的に分配される性質を利用すれば、そこを核形成サイトとすることで、結晶の配向を揃えることができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに、脂質二重膜上のDNA被覆ナノ粒子の2次元結晶の構造制御および脂質二重膜の相転移が膜上のDNA被覆ナノ粒子の分布に及ぼす影響に関する研究を行った。 構造制御では、DNAの相互作用や立体構造に影響する陽イオンに着目し、陽イオンの種類や濃度によって粒子間距離や周期構造が変化することを見出した。さらに、5 mM以上の酢酸マグネシウムを含む溶液を用いて、正方格子構造をもつナノ粒子の2次元結晶を作製することに成功した。これまでのDNA被覆ナノ粒子に関する研究では、DNAの塩基配列によりナノ粒子の配列を制御していたが、陽イオンによってナノ粒子の周期配列を制御したのは、我々が初である。この成果は、すでに1つの主著論文にまとめられ、受理されている。 また、脂質二重膜の相転移が膜上のDNA被覆ナノ粒子の分布に及ぼす影響を調べるために、DDAB脂質二重膜の相転移過程を観察し、冷却過程で膜内にゲル相と指組みゲル相の2つの相が現れることを明らかにした。さらに、相転移過程においてDNA被覆ナノ粒子が指組みゲル相に優先的に吸着することを突き止めた。このことから、膜内に指組みゲル相が形成するとそこにDNA被覆ナノ粒子が集まり、粒子同士の結合が起こりやすくなると考えられる。これは、指組みゲル相が結晶成長学でいう核形成サイトとして利用できる可能性を示唆する。これは、DNA被覆ナノ粒子のパターニングなどの応用だけでなく、結晶成長の観点からみても非常に興味深い結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで研究で、DNA被覆ナノ粒子の2次元結晶の構造に陽イオン、特にマグネシウムイオンが大きく影響することがわかった。また、DDAB脂質二重膜が冷却過程で相転移する際に、ゲル相と指組みゲル相の2つの相が現れ、DNA被覆ナノ粒子が指組みゲル相に優先的に分配されることがわかった。 そこで、結晶構造の制御に関して、当初から計画していたDNAの塩基配列に加え、溶液内の陽イオンが結晶構造に与える影響についても調べる。そのために、DNAの塩基配列と陽イオンの濃度の2つを軸にした結晶構造の相図を作成する。DNAの塩基配列では、DNAの塩基数やDNAが二重螺旋を形成した際の結合力を数値化して軸とする。また、陽イオンに関しては、イオン濃度の他にもイオンの価数の異なる場合についても比較を行う。 また、配向の揃ったナノ粒子の2次元結晶を作製に向けて、2次元結晶の核形成サイトの制御を行う。当初は2種類以上の脂質を混合した多元系の脂質二重膜を作製し、膜の相分離を利用する予定であった。しかし、1元系のDDAB脂質二重膜でもゲル相と指組みゲル相に相分離し、さらに、DNA被覆ナノ粒子が指組みゲル相に優先的に分配されることが明らかになった。このことから、膜内に指組みゲル相が形成すると、そこにDNA被覆ナノ粒子が集まり、そこが核形成サイトとして作用すると考えられる。そこで、DDAB脂質二重膜の指組みゲル相を局所的に形成させる条件を調べる。そのために、溶液の組成や冷却速度を変えて、ゲル相と指組みゲル相の割合の変化を調べる。その中で、最も指組みゲル相の割合が小さい条件下でDNA被覆ナノ粒子の2次元結晶化をすることで、核形成頻度を小さくすることで、配向の揃ったナノ粒子の2次元結晶の作製を目指す。
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Research Products
(4 results)