2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J11354
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 彰弘 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 網膜 / 網膜神経節細胞 / 協同的スパイク発火 / 感覚神経回路 / 視覚情報処理 / 眼球運動 / 多細胞同時記録 / ホールセル・クランプ記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
○固視微動様刺激下におけるサブタイプ依存的な受容野特性の変化 逆相関法によって推定した受容野の時間特徴について主成分分析を行い、キンギョ網膜の神経節細胞をサブタイプへと分類した。分類したタイプごとに、固視微動様の刺激下での応答修飾について、線型-非線型モデルを用いて解析した。結果、細胞タイプ依存的に受容野の時空間特性が変化していた。Fast-transient(Ft)型、Slow-sustained(Ss)型細胞では、入力統合の時間過程の短縮と受容野の拡大がみられ、またFt型、Ss型、Medium-sustained型細胞では、発火閾値の低下が生じた。これらの結果は、神経節細胞が広域な微動刺激に順応することで、入出力特性が動的に変化し、効率的な発火に寄与する可能性を示唆している。実際に、固視微動様刺激後のサッカード様急速運動刺激に対し、これらのサブタイプは、速い発火潜時、高い発火率での応答を示しており、サッカード時の特徴的な応答修飾を説明すると考えられる。
○電気シナプスとGABA受容体が応答修飾を媒介する 上述の応答修飾は、広域な刺激入力への順応過程による可能性がある。網膜での広域な情報処理に関与する電気シナプス(connexin 36/50)を阻害した結果、発火統計量の変化が消失した。また、網膜内網状層において、GABA作動性のwide-field型アマクリン細胞が、側方向の修飾を担うとされるが、実際に、応答修飾は、GABA受容体の阻害剤に対しても感受性があった。従って、眼球運動様刺激による応答修飾は、電気シナプスとGABA受容体に媒介されるといえる。キンギョ網膜ではconnexin 36を介するMb1型双極細胞ネットワークが、広域な修飾経路を駆動することが示されており、眼球運動様刺激下においては、GABA作動性wide-filed型アマクリン細胞を駆動したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験データの蓄積、解析の進捗を含め、当初の研究計画の通りに進展している。現象を説明するための新たな実験デザイン、解析方法の導入を行ったことは、当初の計画以上に進展している。特に、広域な固視微動様刺激下における細胞応答の入出力特性の解析を行い、細胞サブタイプ依存的な受容野の時空間特性の修飾への寄与を部分的にでも説明できたことは、大きな進展であった。一方で、昨年から投稿している論文が、未だ出版に至っていないことは、当初の計画からは遅れている。これらの経過を総合的に鑑みて、本研究課題は、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ホールセル・クランプ法による複数の神経節細胞の同時記録 これまでの研究結果から、眼球運動様の刺激下において、神経節細胞の受容野、発火特性が修飾を受けることを示した。しかし、細胞タイプ依存的な相関性の形成の背後にある機構については分かっていない。そこで、ホールセル・クランプ記録を複数の神経節細胞から同時に行い、膜電位と膜電流変動を解析することで、(a)閾値下の膜電位変動に相関性があるか、(b)どのようなシナプス入力が相関性の形成に寄与するか、調べる。また、(b)に関連し、(c)ノイズ刺激を利用して興奮性/抑制性シナプス後電流の受容野マップを可視化し、入力系の刺激依存的な変化を解析することで、相関性に寄与するシナプス入力の時空間的過程を検討する。
(2)眼球運動様刺激下での動的な応答特性の変化の背後にある神経回路の検討 これまでの研究結果、また(1)で得られた知見から、眼球運動様の刺激下での応答修飾を担う神経回路について、検討を行う。既に、網膜のconnexin 36/50とGABA作動性シナプスを媒介することを示しているが、どのような細胞が担っているのか、明らかではない。興奮性シナプス入力が修飾を受けるため、双極細胞での影響が考えられるが、特に、connexin 36/50への感受性から、Mb1型双極細胞の関与が示唆される。そこで、Mb1型双極細胞からホールセル・クランプ記録を行い、刺激パターン依存的な応答特性の変化について解析を行う。さらに、GABA受容体のサブタイプに応じて、局所/広域の修飾経路での寄与が異なる可能性が示唆されているので、各受容体サブタイプの選択的阻害の効果について検討を行う。 以上の実験によって得られた結果を総合し、眼球運動時における網膜の動的な状態変化を実現する神経回路モデルについて、考察する。
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Research Products
(1 results)