2015 Fiscal Year Annual Research Report
雷雲が持続的に発するガンマ線の生成メカニズムの解明
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15J11654
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楳本 大悟 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 雷ガンマ線 |
Outline of Annual Research Achievements |
GROWTH(Gamma-Ray Observation of Winter THunderclouds)実験では、新潟県柏崎刈羽原子力発電所内にて、東京電力・東大・理研の協力により2006年12月から検出器を展開し、毎冬「雷雲ガンマ線」を継続的に観測してきた。こうした雷や雷雲から生じるガンマ線は、地上や宇宙、航空機などにより世界各国の実験チームにより観測がなされており、雷雲が粒子加速器として振舞っていることが指摘されてきた。しかし、加速器そのものの寿命や、地上で検出できるほどの非常に明るいガンマ線が放射される機構などについてはよく分かってない。
雷雲ガンマ線の発生機構の解明が難題である主な理由として、雷雲ガンマ線が希少な事象であるため、多数の観測に基づく雷雲ガンマ線の全体像と呼べるものがこれまでに得られておらず、具体的な実験計画が立てづらい点が挙げられる。そこで本研究では、これまでの約10年にわたるGROWTHによる観測の結果として得られた全データを解析することにより、雷雲ガンマ線の全体像を描き出すことを目指した。本年度は、これらのデータフォーマットの統一と時刻付けを行い、一貫して全データを扱える枠組みを整え、これまでに目視によって同定された事象をリスト・カタログ化した。
カタログに基いて解析を行った結果、概ねガンマ線強度の時間変動は釣鐘形をしていることと「明るいほど釣鐘の幅、すなわち継続時間が長い」という傾向を発見した。これにより、従来から指摘されているように継続時間が大きさを反映していると仮定すれば、明るさが一定の光源が異なる高度で到来したという描像で説明できる可能性が指摘できる。また、全イベントの中で特異なイベントの詳細解析を行ったところ、陽電子の痕跡が含まれていたため、論文としてまとめ、Physical Review E誌にて出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
10年の間に検出器が段階的に進化してきたため、出力されるデータフォーマットが統一されていないことが判明し、これらを統一する枠組みの構築が必要となった。また、検出器が完全に動作しないケースがあり、時刻付けに失敗したデータが含まれており、数千個のファイルに対して目視および手作業による修正を余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
統一的なデータ構築を行ったことにより、これまで目視で実行してきた雷雲ガンマ線事象の探索を自動化することが理論上可能となった。そこで今後の観測においても自動検出を可能となるよう、アルゴリズムを開発してゆく。また、陽電子を検出した際に電場の観測が併存しなかった事実は、論文投稿時に指摘され、GROWTHチームとしても今後の課題となった。こうしたガンマ線以外のデータに注目する重要性は、イベントをリスト化し、物理的背景について論じようとした際にも顕著化した。そこで、風速や雷雲の位置を推定するために気象レーダー画像の解析手法を確立し、電場の情報を得るために電場計を追加してゆく。雷雲ガンマ線の全体像を掴むうえで事象数が少ないという根本的な課題についても、これまでの観測では10年で約20イベント程度しか観測されない現状が浮き彫りとなったため、観測点を増やしてゆく方針を取る。これにより、おおよそ掴めつつある雷雲ガンマ線の描像を大きな統計に基いて論じることが可能となることが期待できる。
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Research Products
(2 results)