2016 Fiscal Year Annual Research Report
ホウ素による分子性超ルイス酸および新規低配位化学種の開発
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15J11698
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 直樹 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ホウ素 / ボリニウムイオン / 小分子活性化反応 / アセチレン / 挿入反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、二配位ホウ素カチオン(ボリニウムイオン)を用いた新規物質変換反応を通じて、「超ルイス酸分子化学」という新分野の開拓を目指し、研究を行ってきた。その中で得られた研究成果は、国内および国際学会、さらには学術論文として発表し、高い評価を得た。特に、① ボリニウムイオンとアセチレンとの新反応に関する研究成果は、ドイツ一流学術誌「Angewandte Chemie」に掲載され、審査員から高く評価されたことにより、掲載号の裏表紙を飾るなど、国際的に高い評価を得ている。また、② ボリニウムイオンの還元による新規ジボラン(4)誘導体の合成とその特異な発光挙動に関する研究は、複数の国内学会で発表し、審査員から高い評価を得た。上記研究結果の他、他大学との共同研究にも積極的に取り組み、交付申請書にも記載した、「ボリニウムイオンとナノカーボン類との反応によるナノカーボンの電子物性の変化」を追求することができた。こうした事実からも明らかなように、本年度も昨年度に続き、期待以上に研究が進行している。 平成28年度の特別研究員奨励費は主に、試薬や溶媒、ガラス器具の購入および修理に当てた。本研究では、質の高い嫌気下状態が要求されるが、奨励費を最大限活用し、過不足なくガラス器具や脱水溶媒を供給することができた。また、理論化学計算を行うためのパソコンを購入し、多角的アプローチから研究を推し進めることができた。来年度も引き続き、ボリニウムイオンの反応開発を通じて、「超ルイス酸分子化学」の開拓を目指し、研究を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで、合成不可能とされてきた新規二配位ホウ素カチオン(ボリニウムイオン)の開発から、その構造、性質および反応性を明らかにしてきた。平成28年度では、ボリニウムイオンの反応性の評価に加え、ボリニウムイオンのみから合成可能な新規ジボラン(4)誘導体の開発にも成功した。また、得られたジボラン(4)はシンプルな構造にもかかわらず、過去報告例のない、極めて特異な発光挙動を示すこと明らかにしている。このように、ボリニウムイオンから新たな物質系にアプローチし、ユニークな分子を提案できた本年度は、十分に満足できたと言える。得られた研究成果は、日本国内および国際学会の場で発表するとともに、研究成果を学術論文として世界に発信できた。 本年度の研究成果は、交付申請書に記載した「研究目的」を十分満足する結果であり、当初の計画以上に進展していると考えている。引き続き、ボリニウムイオンの反応開発を通じて、「超ルイス酸分子化学」の開拓を目指し、研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでボリニウムイオンの合成から反応開発に至るまで十分な結果が得られている。最終年度となる平成29年度は、これまで明らかにしてきたボリニウムイオンの性質および反応性を総括し、ボリニウムイオンについての総説を執筆する予定である。そのために、① シンプルな物質系をターゲットとしたボリニウムイオンの反応性の評価を検討する必要がある。具体的には、ベンゼンやケトン類といったシンプルな物質との反応性を評価することで、各官能基におけるボリニウムイオンの反応性を系統的に明らかにしていく予定である。また、② 昨年度に引き続き、新規ボリニウムイオンの開発も継続的に行う予定である。例えば、非対称の置換基を導入したボリニウムイオンは、その置換基の電子供与能の差が分子構造や反応性にどのように影響するのか大変興味深いものである。さらに、③ ボリニウムイオンの応用展開として、Frustrated Lewis Pair のルイス酸パートとしての利用や重合触媒としての展開を検討する。上記実験結果は、NMRやIRなどの各種分光分析、単結晶X線構造解析、および理論化学計算により、解析していく予定である。特に②に関しては、理論化学計算を用いて、あらかじめ分子構造やその電子状態を予想することで効率良く研究を展開できると考えている。これら研究予定と並行して、前項で述べた新規ジボラン(4)の性質についても明らかにしていく予定である。
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Research Products
(10 results)