2015 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子多様度解析を用いたアントクメ個体群消滅危険性の予測
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15J11734
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
秋田 晋吾 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | アントクメ / 生物系統地理 / カジメ類の雑種 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,1). アントクメの分布域各地でサンプリングを行い(計276個体採集),2). 生物系統地理解析を用いて種内系統分けを行った。また,その過程で,野生個体におけるカジメ類の種間交雑を初めて分子同定できた。 1). サンプリングは,2015年5-6月に研究対象種であるアントクメの分布域全域で協力者を募り,サンプリングを行った。採取地は,鹿児島県串木野と長島,長崎県野母崎,新三重,小値賀,壱岐原島および壱岐嫦娥崎,高知県土佐清水,三重県尾鷲市早田浦,静岡県の仁科および沼津市平沢,東京都伊豆大島の12カ所で,各地で20-30個体(計276個体)を採集した。採集したサンプルは,実験室に持ち帰り,葉長,葉幅,葉厚,湿重量,茎長,茎幅,茎厚,付着器長,付着器幅,付着器湿重量の10項目を測定した。主要産地である,鹿児島県いちき串木野と長島,長崎県新三重,三重県尾鷲市早田浦,静岡県沼津市平沢では現地調査を行い,アントクメ群落の垂直分布および生育密度を測定した。これらの生育状況は,次年度(平成28年度)実施予定のマイクロサテライト解析の際に用い考察する予定である。 2). 生物系統地理解析では,mtDNAのcox3領域561bpを解析した。その結果,ハプロタイプは,4つ(H1-H4)に分かれることが明らかになった。しかし,H1がサンプルの98%を占め,ハプロタイプ多用度(Hd)は0.022であり,アントクメのcox3は多様性が低いことが示唆された。また,本種のcox3に変異がほとんど認められなかったにもかかわらず塩基の置換が多い個体があった。人為的ではあるが,カジメ類の海藻は雑種を作ることが知られているため,種間交雑種の疑いがあった。そこで,mtDNAのatp8およびtrnWI,cpDNAのrcb spacer,nrDNAのITSの4領域を用いて系統解析を行った。その結果,カジメ類では野生個体で種間交雑が行われていることが明らかになり,それを分子的に確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度予定していた,サンプリングは予定通りに完了した。生物地理学的解析を行いmtDNAのcox3領域では多様性がほとんど認められなかった。しかし,cox3は褐藻では,頻繁に使用される領域であり,アントクメで多様性が低い理由がわからなかった。次年度に異なる領域で再解析する必要があるため,やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
生物地理的解析については,mtDNAの異なる領域で解析する予定である。そして,今後はマイクロサテライトを用いた遺伝子多用度解析を行う。本課題で目的としている遺伝子多用度と藻場の健全性の関係や,平成27年度の解析によって明らかになったカジメ類の雑種について,マイクロサテライト解析から有用なデータが得られる予定である。
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