2016 Fiscal Year Annual Research Report
網膜血管形成のプログラム破綻がもたらす血管パターン異常と網膜症リスクとの関連
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15J11782
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
森田 茜 北里大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 網膜血管 / 血管生物学 / 薬理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
眼内に生じる病的血管新生は、主たる失明原因疾患である糖尿病網膜症と加齢黄斑変性症の病態に深く関与している。そこで、安全かつ有効な病的眼内新生抑制法を開発するために、本研究では、申請者がこれまでに確立した新生仔期マウスにおいて任意のタイミングで VEGF 受容体阻害薬を投与することにより作製する網膜血管形成プログラムかく乱モデルを用いて 1. 眼内血管新生の方向性調節機序と 2. 網膜血管のパターン形成異常と網膜疾患リスクの関連性を明らかにすることを目的としている。本年度は、次のような成果を得た。
眼内血管新生の方向性調節機序: (1) 網膜血管形成プログラムかく乱モデルにおける血管新生の方向性について評価するため、新生血管の先端部で観察される血管新生芽の数について検討したところ、血管の退縮領域で増加し、未形成領域で減少することを見出した。これはこれまでに認められていた血管形成の方向性と一致していた。 (2) 網膜の低酸素状態について低酸素マーカーを用いて検討したところ、血管の退縮領域よりも未形成領域が低酸素状態にあることを明らかにした。VEGFはアストロサイトに発現しており、血管新生が抑制されている未形成領域で多く発現していた。そこで、それらの VEGF の血管新生における意義について薬理学的検討を行った結果、低用量の VEGF 受容体阻害薬投与が未形成領域への血管新生を促進することを見出した。このことから、VEGF 刺激の強弱によって血管内皮細胞応答が変化することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血管新生芽の数を評価することで血管新生の方向性を評価できた点、血管新生の方向性と網膜の低酸素状態および VEGF 発現分布との関連を明らかにできた点および血管新生方向性調節における VEGF の役割を明らかにできた点から、おおむね順調に進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
VEGF 受容体阻害薬を投与することで作製する網膜血管形成プログラムかく乱モデルの方向性調節機序における各種細胞内シグナル伝達経路の意義について、マウスおよび培養細胞を用いて明らかにする。 VEGF 刺激の強弱による血管内皮細胞応答の相違が培養細胞でも生じるか否かについて培養血管内皮細胞を用いて検討する。その結果に応じて検討する細胞増殖・生存シグナル経路を選択し、上流・下流分子種の発現変動を定量的RT-PCR、Western blot法、免疫染色法により検討する。培養細胞で得られた結果に応じて網膜血管形成プログラムかく乱モデルにおいても検討を行い、血管方向性調節における機能的役割を明確にする。
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