2016 Fiscal Year Annual Research Report
異種プラズモニックメタサーフェスの積層化による集積化高機能光デバイスの開発
Project/Area Number |
15J11917
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
石井 美帆 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 走査型光プローブ顕微鏡 / ヘテロダイン干渉 / プラズモンレンズ / 軸対称偏光子 / 複屈折光学素子 / メタサーフェス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は金ナノフィンアレイを用いたマイクロ軸対称偏光子アレイ・プラズモンレンズの試作、および偏光位相測定用のプローブ顕微鏡の開発、という2つの項目について研究を行った。 平成27年度までに実現した埋め込み型金ナノフィンアレイ1/2波長板を5マイクロメートル周期で主軸方位を変えながら集積化したマイクロ軸対称偏光子アレイを試作した。電子線描画を使用した試作の結果、設計通りの寸法で描画が行われ、埋め込み型金ナノフィンアレイを集積化することに成功した。この成果は今後取り組む予定の積層メタサーフェス実現のために必要不可欠なものである。一方で、以前と比べて透過率が低くなってしまったため原因の究明と製作条件の改善が必要である。 マイクロ軸対称偏光子の上に積層を予定しているプラズモンレンズの試作を行った。電子線描画による円形パターンの描画の結果、現像時に変色が生じる等の問題が生じた。 マイクロ軸対称偏光子の光学特性を測定するための偏光位相測定用プローブ顕微鏡の構築を行った。当初の計画では、散乱プローブからの側方散乱を2つのヘテロダイン干渉計で測定する手法を検討していた。しかし、対物レンズの機械的干渉や測定系の精度の問題から実現が困難であることが判明した。そこで、中空チップを持つカンチレバーからの透過光を測定する手法を新たに考案した。この手法では従来計画していた手法より簡素な光学系で精度よく偏光や位相を測定することが可能であると推測される。これまでに新たな光学系を設計・構築し、金ナノフィン試料上でヘテロダイン干渉を使った位相測定実験を行った。測定精度の問題は残るが、偏光方向ごとの光位相を取得することに成功した。微小領域内の偏光・位相を測定した前例は少なく、新規性のある成果といえる。また、走査機構を付加することによって先述のマイクロ軸対称偏光子の性能評価への利用が期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
偏光・位相分解能を持つプローブ顕微鏡の開発では、従来の散乱型近接場光顕微鏡をベースとして、偏光成分ごとに2つの受光器で光を計測する光学系を想定していた。予備実験の段階で、プローブ先端以外からの散乱光が測定ノイズとして測定される問題が生じた。近接場光の測定では試料近傍でのタッピング等の手法でノイズを除去できるが、伝搬光・近接場光両者を対象とした本研究ではノイズ除去が困難であることが明らかになった。また独自の手法で測定を目指していた偏光成分ごとの測定では、レンズの開口数や公差の問題から空間分解能と偏光分解能の両立が困難であるということが明らかになった。 そこで、新しい光学系の設計・構築に6か月程度の時間を要したため、当初の計画より進捗がやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発を進めてきたマイクロ軸対称偏光子およびプラズモンレンズの評価のためには、微小領域の光の状態を測定できる顕微鏡が不可欠である。そこで平成29年度は偏光位相測定プローブ顕微鏡の開発を優先して進める。平成28年度までの実験結果では偏光状態の推定は十分な精度で実現していない。また、試料上をカンチレバーで走査する機構も未実装である。平成29年度は受光素子のセンサ感度の調整やノイズ低減や光センサの感度改善を行い、偏光状態の推定精度を上げる。また、数値解析によってカンチレバーの中空チップの透過特性・複屈折特性を調査し、測定の妥当性や測定精度を定量的に検証する。さらに、マイクロ軸対称偏光子等の微小な光学素子の測定を行うため、試料ステージに走査機構を実装する。3軸のピエゾステージを設置し、サブミクロンの分解能でラスタースキャンをしながら微小光学素子から出射光を測定する。試料表面近傍を測定するため、プローブと試料の接触を光てこ方式で検出する機構を光学系に追加する。これらの成果についてAPNFO11(台湾)で発表予定である。 マイクロ軸対称偏光子・プラズモンレンズ積層素子の製作についても並行して進める。設計通りの微細構造を製作できるようにエッチングプロセスや電子線描画の露光量等の条件の最適化を行う。また、これまで別々に試作を行ってきたマイクロ軸対称偏光子とプラズモンレンズの一体加工を試みる。電子線の重ね描画を利用して素子を試作し、SEM等で位置合わせ精度を評価する。 プローブ顕微鏡の構築・マイクロ光学素子の両者が達成された場合、マイクロ光学素子の評価を構築したプローブ顕微鏡を用いて行う。
|
Research Products
(5 results)