2015 Fiscal Year Annual Research Report
広域反応場を有する気液界面プラズマを用いた難分解性汚染水の高速処理
Project/Area Number |
15J11924
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
立花 孝介 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 気液界面プラズマ / 沿面放電 / 過酸化水素 / プラズマ-液体相互作用 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,気液界面プラズマを用いた過酸化水素の高速・高効率生成に関する研究およびプラズマ-液体相互作用に関する研究を行った。本研究では,難分解性有機物の分解に過酸化水素とオゾンを用いるため,難分解性有機物の高速・高効率処理の実現には,過酸化水素の高速・高効率生成方式の開発が不可欠である。また,プラズマ-液体相互作用の解明は,プラズマが有機物分解に及ぼす影響を理解し,難分解性有機物の分解システムを最適化する上で非常に重要である。 過酸化水素の高速・高効率生成を目的として,新たな気液界面プラズマ発生方式の開発を行った。本プラズマリアクタでは,アクリルパイプ内壁に水膜を形成し,アクリルパイプ中心部にステンレス製の円板電極を設置した。そこに10 kV程度の高電圧パルスを印加することにより,水膜上を進展する沿面放電の生成に成功した。本放電は高導電率の処理液にも大きなプラズマ-液体接触面積を有するプラズマを作成可能である。本放電を1.5 mS/cmの硫酸ナトリウム水溶液に照射したところ,最大で5.4 g/kWhの過酸化水素生成効率を達成した。また,そのときの過酸化水素生成速度は19.8 mg/hであった。高導電率の処理液を対象とした実験としては,他研究と比較して高い生成効率を達成した。 プラズマ-液体相互作用の解明を目的として,水膜上を進展する沿面放電のモデル化を行った。本モデルでは,パイプ状の電極が4 mmのギャップを隔てて対向しており,また,電極から1 mm程度離れた位置に水膜を設置した。電極形状が実際と異なるのは,モデルの単純化のためである。電極間電圧を6 kVにしたところ,シミュレーション上で水膜上を進展する沿面放電の再現に成功した。来年度は,開発したプラズマモデルにガス温度や物質移動に関するモデルを連成することにより,プラズマ-液体相互作用の計算を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,プラズマによって生成された過酸化水素・オゾンを利用することで,プラズマ近傍のみでなく処理液全体で難分解性有機物を高速・高効率に処理すること,および,気液界面プラズマが汚染水中の有機物質に及ぼす影響を解明することである。 研究は,おおむね順調に進展していると考えている。本年度は,難分解性有機物を高速・高効率処理するのに必要な過酸化水素に関する研究を行った。高導電率処理液に対して,過酸化水素を高速・高効率に生成することが可能なプラズマ発生方式に関する研究を行ったところ,水膜上を進展する沿面放電の開発に成功した。本放電は過酸化水素の生成速度・生成効率に改善の余地があるものの,高導電率の処理液を対象とした研究としては,他研究と比較してよい結果が得られた。本研究成果をもとに,今後は,より高速・高効率に過酸化水素を生成できる方式の開発,および,開発した過酸化水素生成方式にオゾンを併用した難分解性有機物の分解に関する研究に進むことが可能である。 気液界面プラズマが汚染水中の難分解性有機物に及ぼす影響の解明も順調に進んでいると考えている。気液界面プラズマが液中の物質に及ぼす影響を解明するには,プラズマ-液体相互作用の解明が必要不可欠であり,プラズマ-液体相互作用の解明には,水膜上を進展するプラズマをシミュレーション上で再現することが必須である。今年度に開発したプラズマモデルにより,水膜上を進展する沿面放電を再現することが可能となった。今年度に開発したプラズマモデルにガス温度や物質移動に関するモデルを連成することにより,来年度は,プラズマ-液体相互作用の計算を行うことが可能になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,今年度に遂行した研究をさらに発展させるとともに,難分解性有機物分解を行う予定である。 新たに開発した水膜式沿面放電は高導電率の処理液に対しては高い生成効率を達成したが,低導電率の処理液に対しては80 g/kWhの生成効率を達成したという報告があるため,過酸化水素の生成効率には改善の余地があると考えている。また,生成速度に関しても,さらなる向上が望まれる。このような問題を解決するために,本研究員は水膜式沿面放電をさらに発展させる予定である。具体的には,生成した沿面放電をガス流によって引き延ばし,より大きなプラズマ-液体接触面積を有するプラズマを開発する予定である。 プラズマ-液体相互作用解明のために,今年度開発した沿面放電のモデルをさらに発展させる予定である。現在のモデルはプラズマ-液体界面で生じる物質移動およびエネルギー移動が含まれていない。そこで,開発した沿面放電のモデルとプラズマ-液体界面で生じる物質移動およびエネルギー移動を連成し,実際にプラズマ-液体相互作用を計算する予定である。また,プラズマ-液体界面で生じる物質移動およびエネルギー移動をモデルに組み込むことにより,プラズマのガス温度および過酸化水素の生成効率をシミュレーションで求められるようになるため,実験値との比較を行うことが可能になる。シミュレーション結果と実験結果を比較することで,より正確にプラズマ-液体相互作用を知ることができると考えている。 改善した過酸化水素生成方式にオゾンを投入し,難分解性有機物の分解を試みる予定である。オゾン/過酸化水素法を用いた難分解性有機物の分解では,オゾンと過酸化水素の投入比に最適値が存在し,その値は分解システムや分解対象の有機物に依存する。オゾン濃度を変化させながら難分解性有機物を分解し,その生成速度および生成効率を評価する予定である。
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