2016 Fiscal Year Annual Research Report
惑星飛行探査に向けた機体展開・運動制御融合型航空機の開発
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15J12217
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
藤田 昂志 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | UAV / 運動解析 / 空中展開 / アクチュエータ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに翼の折り畳みのヒンジ軸をピッチ方向に傾けることの効果を明らかにしてきたが,今年度はヒンジ軸をヨー方向に傾けることの効果を調査した.ヒンジ軸をヨー方向に傾けることで,折り畳まれる外側の翼に対して横滑り角がつき,空気力が減少して空気力の展開への影響が抑えられることが分かった.この効果を用いることにより,必要な展開機構トルクを低減すること,展開可能条件を広げること,および展開のロバスト性を高めることが可能である.しかしながら一方で,ヒンジ軸のヨー方向への傾斜は,外側の翼に作用する空気力の絶対値を小さくすることはできるものの,その方向は変えることができないことが分かった.そのため,外側の翼に生じる空気力が翼を閉じる向きに作用してしまっている状態であっても展開するために,必ず補助的な展開アクチュエータが追加で必要となることが分かった.ヒンジ軸をピッチ方向に傾けた場合には,適切に設定すれば展開に対してアクチュエータは不要で空気力のみによって展開できていたので,展開機構としてはヨー方向の傾斜よりもピッチ方向の傾斜の方が適していることが分かった. 本研究のアクチュエータとして有望である誘電エラストマについても研究を進めた.今年度は関連する研究所及び企業と共同で,誘電エラストマを舵アクチュエータに適用した翼構造モデルを製作し,その力学的特性を調べた.無風状態において,誘電エラストマを用いて舵に対して所望の動作をさせることが可能であることが確認できた.今後は風洞中でこのアクチュエータを動作させることを考えている.これにより,誘電エラストマの無人飛行機への搭載の有効性を確認したい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
空中で飛行機の翼を展開させるための方法を種々検討した結果,誘電エラストマによる人工筋肉を用いる方法が,本研究に適している可能性が浮上してきた.しかし,この誘電エラストマによる人工筋肉は近年発明されいまだ開発が盛んに行われている最中であるため,飛行機にこれを適用するには,もっと基礎的な研究が追加で必要であることが分かった.そのため,当初の研究計画に対してはやや遅れているという状態である.しかし研究自体は着々と進んでおり,29年度には当初の研究計画とは別の形で追加の論文を執筆できると考えている.まずはこれらを進めた上で,当初の研究計画に立ち戻って研究を進めたいと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は初めに,翼に対して誘電エラストマを用いることについて検討を深める.これまでに誘電エラストマを舵アクチュエータに適用した翼構造モデルを製作しており,これについて学会発表する予定である.また,誘電エラストマの研究をさらに進め,空気力が作用する環境下で正しく舵を動かせることを確認するため,翼構造モデルを適宜改修した上で風洞試験を実施する. また,さらに発展的な形状として,誘電エラストマによる薄膜を検討する.これは蝙蝠の翼に着想を得たものであり,誘電エラストマによって製作した膜を収縮又は弛緩させることによって,翼の形状をコントロールし空力特性や運動を制御するものである.膜翼は本研究が対象とする低レイノルズ数流れ場において一般的に空力性能が高いことが知られている.それに加えて,軽量であることや,展開・収納しやすいという特徴もあるため,誘電エラストマによる薄膜は機体展開・運動制御融合型航空機に適していると考えられる.29年度には,この誘電エラストマによる膜翼を専門家と協議したうえで製作する.次に,無風状態での形状や,印加電圧に対する膜張力などの基礎特性を取得する.その上で風洞試験を実施し,風洞気流中で誘電エラストマの膜翼を収縮・弛緩させた場合の翼の形状や,これに伴う空力特性の変化を計測する.これにより,種々状態に対する空力的及び構造的特性を解明する. 最後に,得られた空力特性のデータベースをもとに運動制御動作を抽出し,アクチュエータをどう駆動したら機体がどう運動するかを明らかにする.そして,その知見を用いて機体展開・運動制御融合型航空機の飛行制御シミュレーションを実施し,機体展開・運動制御融合型航空機の実現可能性を明らかにする.最終的に全ての結果を論文にまとめて投稿する.また,これまでに学会発表してきた主翼の展開シミュレーションに関しても,同様に論文にまとめる.
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Research Products
(5 results)