2015 Fiscal Year Annual Research Report
全固体ナトリウム‐硫黄電池の実現にむけた材料および構造に関する研究
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15J12341
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
谷端 直人 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 全固体ナトリウム二次電池 / 高容量硫黄電極材料 / アモルファス電極 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、研究目的の一つである「新規硫黄系アモルファス電極の開発」の対象として、全固体ナトリウム電池において従来の電極よりも高容量を示す、「十硫化四リンを用いたアモルファス状硫黄電極」に注目し研究を行った。十硫化四リンは固体電解質の代わりに用いられており、従来のナトリウムイオン伝導性固体電解質を用いた電極とは反応機構が異なると考えられる。この高容量を示す硫黄電極の構造解析を行い、反応機構を解明することは、更なる高容量化の指針取得に加えて学術的観点においても重要であると考えた。 十硫化四リンを用いたアモルファス状硫黄電極に対して充放電を行い、その前後の構造解析を行った。具体的な分析手法としては、XRD測定、Raman分光分析、SEM観察、EDX元素マッピングなどを用いた。それらの解析により、十硫化四リンを用いたアモルファス状硫黄電極では、アモルファス状のリン化合物中の硫黄鎖が、放電によって固体電解質側からナトリウムにより切断されていくことが示唆された。この放電機構では、レドックス反応が起こる硫黄鎖とナトリウムイオン伝導部位が隣接した状態であり、この状態が大きな放電容量の要因ではないかと考えられる。得られたこの知見は、年次計画の2年目に予定していた「電極活物質と固体電解質の複合化手法の検討」に対して有用な知見であると考えられる。 一方、この硫黄電極には初期充放電過程において不可逆容量が存在する。充電後の硫黄電極の解析によって、放電時のチオリン酸ナトリウムの結晶化が不可逆容量の一因であることがわかった。チオリン酸ナトリウムの結晶化は、電極活物質部位と固体電解質部位の複合状態を低下させていると考えられる。そこで、その結晶化を抑制するために電極の多成分化を行った。その結果、硫黄電極を用いた全固体ナトリウム電池の更なる高容量化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
十硫化四リンを用いたアモルファス状硫黄電極を研究することにより、「新規硫黄系アモルファス電極の開発」や「電極活物質と固体電解質の複合化手法の検討」を行えていると考えられる。また、得られた知見に基づいて、従来よりも「高容量・高出力を併せ持つ全固体ナトリウム-硫黄電池の作製」に成功している。このように、最終研究目的をある程度満たすように研究が進み、得られた成果を学会で発表しているため上記の評価をした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題としては、「十硫化四リンを用いたアモルファス状硫黄電極」の更なる構造解析とその電極を用いた全固体ナトリウム-硫黄電池の更なる高容量化・高出力化である。更なる構造解析の具体的な手法としては、硫黄電極のNMR測定による局所構造解析を行う。また、放射光や中性子線による全散乱測定とリバースモンテカルロ法による解析により、アモルファス化合物の3次元構造解析を行う。それらの硫黄電極の構造解析に加えて、透過電子顕微鏡と電子エネルギー損失分光法により、それらの化合物が硫黄電極中でどのように分布しているかを解析する予定である。 一方、十硫化四リンを用いたアモルファス状硫黄電極は、全固体リチウム電池において、全固体ナトリウム電池の場合より、高い可逆容量を示す。このリチウム系においても同様の解析をし、ナトリウム系と比較することで、高容量化の指針を得る。
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