2016 Fiscal Year Annual Research Report
会話重心性理論の構築:テクノロジー介在会話における参与者の言葉と身体
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15J12513
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
砂川 千穂 国立情報学研究所, コンテンツ科学研究系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 遠隔地間コミュニケーション / 参与構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目は1年度に引き続き,データを整備・分析を行うとともに新たなデータ収集,フィールドワークを実施し,執筆活動,学会発表を中心とした研究活動を行うことが出来た.第1年度に進めた言語・非言語類型化課題を進めつつ,遠隔地間定例会議における自然発生的相互行為のデータ収録を行った.遠隔地間会議の自然発話をデータとして収録するためには,a.収録をどこから始めるのか,b.どの場所にカメラを何台設置するのか,c.遠隔地間のビデオ同期の方法などを詳細に決める必要があった.異空間の間に繰り広げられる参与構造を言語学,言語人類学的に効率よくデータ収集する方法論はいまだ確立しておらず,データ収集方法の側面からも貴重なデータ収集を実施することが出来た.初年度より継続しているデータに加え,新たに収集したデータを整備・分析しながら,後述の研究活動を実施した.これらの活動では,会話における重心の存在を仮定,検証するために,多様な場面におけるコミュニケーションデータを使用した.遠隔場面は,対面場面とくらべて別の空間にいる会話参与者の言動をとらえることが時に困難である.国際学会における発表では,参与者がこの困難を回避する手続きを解明し,その手続きが社会的に指標する意味合いについて議論した.技術的,物理的な限界から生じるコミュニケーション上の困難を回避する手続きと,その手続きによって達成される相互行為の相関関係を考察することは,会話重心性を理論的に構築するために重要な要素である.またジェスチャー国際会議の発表では, 指揮者訓練場面における会話を中心にこの点について分析し,参与者が言語的に表現不可能な身体的動作が教示,学習されるのかを議論した.なおこの分析を論文にまとめ掲載予定である.また,初年度より執筆を進めていた会話の重心性理論の構築を参与枠組みの概念から議論した論文が出版された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度末に出産し,新生児を抱えての研究生活であったが,上述の通り,遠隔地間定例会議における自然発生的相互行為のデータ収録を継続的に行うことができた.この遠隔地間会議は,年度を通じ毎月,ヨーロッパと日本をまたいで行われたが,会議参加者には時折ろう者と手話通訳者を含み,当初想定していた参与構造より複雑な空間配備を参与者同士が行っていた点が特徴的である.また,データ収集後は,分析と整備をすでに開始し,理論応用化にむけての準備を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
上述の現状を踏まえて,最終年度は理論構築のためのデータ分析,議論,執筆を目標とする.すでに新しいデータを利用し,論文投稿の準備を始めている.収録したデータの整備・分析を進めるとともに,映像専門家との座談会を開き,実践場面への応用を考える.当初は映像専門家からの知見を得ることは,最終年度にのみ行う予定であったが,上述したようにデータ収集の過程において,カメラの設置方法や目前でくりひろげられる相互行為の開始部分のとらえ方などを設定するに当たり,専門家の知見が必須であったために当初より早く,本年度より映像専門家との意見交換の場を設けることが出来た. 来年度は,データ整備・分析に加え,実践と理論の相関関係を強化する目的で, 専門家と再度議論を重ね理論構築に役立てる予定である.
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Research Products
(4 results)