2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J12554
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 萌 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | I型インターフェロン / アポトーシス / ウイルス感染 / 抗ウイルス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでウイルス摸倣刺激後24時間後の細胞でI型IFNを産生する細胞とアポトーシスを誘導する細胞が異なることが観察されていた。しかし、アポトーシスのみを選択したと思われる細胞が観察前に一過的にI型IFNを産生してレポーターであるYFPを発現していた可能性が考えられる。そこで、I型IFN産生性細胞とアポトーシス誘導細胞をタイムラプス観察したところ、この場合もI型IFNを産生した細胞群とアポトーシスした細胞群が異なることが観察された。 では、ウイルス感染模倣刺激に対して「Ⅰ型IFNを産生する細胞」と「アポトーシスする細胞」は、それぞれいかなるメカニズムでその応答を選択しているのだろうか。ひとつの可能性は、用いた細胞がそもそもヘテロな集団であり、その中で役割分担しているというモデルである。もうひとつの可能性は、例え全く同じ種類の細胞であっても、応答性の異なる細胞群が存在するというモデルである。後者のモデルを検証するために、MEFをクローン化して用いた。するとクローン細胞においても、I型IFN産生細胞とアポトーシス誘導細胞が分かれるという結果が得られた。このことから同種の細胞の中でも2つの細胞群に分かれるという後者のモデルが存在する可能性が示唆された。 では、この違いを産み出すメカニズムは細胞間相互作用に基づくのか、それとも細胞自律的に決まっているのだろうか。まず、前者の可能性を検証するため、I型IFNの産生とアポトーシスの誘導のうち、一方の応答を阻害したときにもう一方の応答を誘導する細胞の割合が変化するかを調べた。すると、一方の応答を阻害するともう一方の応答を誘導する細胞の割合が減少することが示された。これらの結果から、I型IFN産生細胞とアポトーシス誘導細胞がお互いに影響しあいながらそれぞれの応答を誘導する細胞の割合を決定していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでウイルス摸倣刺激後24時間後の細胞でI型IFNを産生する細胞とアポトーシスを誘導する細胞が異なることが観察されていた。しかし、アポトーシスのみを選択したと思われる細胞が観察前に一過的にI型IFNを産生してレポーターであるYFPを発現していた可能性が考えられる。この可能性について検証するためにI型IFN産生性細胞とアポトーシス誘導細胞をタイムラプス観察したところ、この場合もI型IFNを産生した細胞群とアポトーシスした細胞群が異なることが観察された。平成27年度は、この実験以外にも本当に細胞がI型IFNの産生とアポトーシスの誘導を使い分けているのかさらに検証していた。その結果、同種の細胞においても、細胞がI型IFNの産生とアポトーシスの誘導を使い分けていることがさらに示唆された。 平成27年度は計画通りにこの抗ウイルス応答を使い分けるメカニズムについても検証を行ってきた。抗ウイルう応答を使い分けるメカニズムとして、細胞間相互作用によって細胞が応答を決定する可能性と、細胞自律的に応答が決まっている可能性が考えられた。平成27年度は細胞間相互作用と細胞自律的な要因の両方の観点から、いくつかの分子に注目して、使い分けのメカニズムを検証してきた。まだ完全にメカニズムを解明できた訳ではないが、使い分けのメカニズムに迫る実験を行ってきた。年次計画では平成27年度中に抗ウイルス応答のメカニズムを解明することを目指していたが、メカニズムについてもある程度検証できたため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において骨髄由来マクロファージやマウス胎児期繊維芽細胞において抗ウイルス応答の使い分けが存在する可能性が示唆された。そこで、これらの細胞以外の細胞でも抗ウイルス応答の使い分けが存在するかを確認するために、脳や心臓、上皮といった様々な組織の様々な細胞にウイルス模倣感染を行い、それぞれの抗ウイルス応答を示す細胞の分布を観察する。また、細胞種ごとの分布の違いを比較し、細胞種と選択する抗ウイルス応答の違いから、抗ウイルス応答の使い分けの意義をさらに検証する。 さらに、抗ウイルス応答を使い分けるメカニズムを解明する。少なくともMEFについては、クローン化した集団においてIFNを誘導する細胞とアポトーシスする細胞が分かれるという結果を得ている。従って、同種の細胞集団であっても応答の違いを生み出すメカニズムが存在する可能性が考えられる。クローン化したMEFにウイルス感染しても、ある一定の割合で「IFN産生細胞」と「アポトーシス細胞」が観察された。では、抗ウイルス応答の違いを生み出すメカニズムは細胞間相互作用に基づくのか、それとも細胞自律的に決まっているのかについて検討する。平成27年度の研究によって、2つの抗ウイルス応答のうち一方の応答を阻害した場合にもう一方の抗ウイルス応答を選択する細胞の割合が減少することが示唆された。この結果からそれぞれの抗ウイルス応答を誘導する細胞の割合が細胞間相互作用によって影響を受けることが示唆された。本年度は細胞間相互作用とともに、細胞自律的に抗ウイルス応答を選択するメカニズムが存在するか調べる。そこで発見した原因分子を過剰発現させた場合や欠損させた場合に、それぞれの応答を示す細胞の割合がどのように変化するかを検証する。さらにそれぞれの応答を示す細胞の割合が変化した際に個体としての抗ウイルス応答がどのように変化するか解析し、使い分けの意義を検証する。
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Research Products
(1 results)