2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J12559
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
水林 純 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 戦国期 / 地域権力 / 惣国一揆 / 戦国大名 / 地域社会 / 土豪 / 百姓 / 村落 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の戦国期社会の特質を、地域社会における諸階層・諸集団(在地領主、寺社、土豪、百姓)の視座から明らかにしようとするものである。素材としては、課題名の如く、畿内近国を中心に据えつつ、必要に応じて東国地域にも視点を広げ、追究を進めている。研究実施状況は、以下の通りである。①畿内近国の内、紀伊国を事例にとり、在地領主・土豪層の連合組織である惣国一揆の構造分析を行った。具体的には、一揆を構成する土豪層が、社会集団・百姓との関係において如何なる性格を持つ階層であったのか、また、かかる土豪層は、一揆に結集すること(土豪連合)により、地域社会で如何なる機能を果たしたのかという問題に光を当て、研究を進めた。研究内容は、「惣国一揆下の土豪連合の地域権力的性格―紀伊国名草郡を事例として―」と題した口頭報告(2015年11月、歴史学研究会中世史部会)にて発表しており、現在は、論文化の上、学会誌に投稿している。目下、修正後再提出を経て審査中である。②加えて、今年度は、畿内近国社会との比較の視座を提示する意味から、東国地域、具体的には、駿河国の沿海地域、口野五ヶ村にも手を広げ、追究を行った。戦国期の当該地域は、国人葛山氏や戦国大名北条氏などの上部権力による領域支配を受容した地であるが、本研究では、時期の変遷に応じ、口野五ヶ村における地域秩序と、権力・土豪・民衆の関係が如何に変化したのか、そして、そのことが、中世から近世への移行という観点から見て、如何なる意義を持ったのかという点に光を当てた。研究内容は、「戦国期領域権力下における土豪層の変質と地域社会―駿河国口野五ヶ村を事例として―」と題した口頭報告(2015年10月、東京大学中世史研究会)にて発表しており、論文化が完了している。論文は、渡辺尚志編『移行期の東海地域史』(勉誠出版,2016年刊行予定)にて、公表される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度に実施した研究は、①戦国期の畿内近国に固有の地域権力である惣国一揆の歴史的性格を、土豪・社会集団の視座から地域社会論的に考究すること、②東国に典型的に発達した戦国大名領国を事例にとり、畿内近国との比較の視座から、そこでの大名・領主権力・土豪・百姓間の社会関係が如何なるものであったかを考究すること、の二点を主な課題とするものであった。当初の計画からは変更が生じたが、いずれの課題も、年度内に、学会報告の形で成果を発表するとともに、論文として成稿し、公表の準備を調えることが出来たため、概ね順調に研究を遂行しえたと考え、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究課題の中心的フィールドである畿内近国の分析を、より一層深めてゆく所存である。2015年度の研究過程においては、地域社会論的視角からの惣国一揆研究を深化させる余地が多く残されている現状を再認識することができたため、2016年度も、引き続き、対象地域の幅を広げつつ(近江国・伊勢国)、その方面からの追究を進めてゆきたい。また、戦国在地領主論の研究についても、当初の計画に基づき、深化を図りたいと考えている。研究成果は、論文化の上、順次、学会誌に投稿する心積もりである。
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