2016 Fiscal Year Annual Research Report
越境する霊性と身体―行から見る宗教の近代化と国際化の歴史記述
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15J12590
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
栗田 英彦 南山大学, 宗教文化研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 修養 / 身体技法 / 静坐 / 近代日本宗教史 / 新宗教運動 / 生長の家 / 近代仏教 / ヨガ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①静坐社で新たに発見された書簡類の電子化作業およびそのリスト化、②静坐社の国内外の人脈の調査、③アメリカへの調査旅行、④「生長の家」出版物の収集、⑤論文や学会発表による成果発表、以上の五点の項目を計画していた。以下にそれぞれの実績を述べる。 ①現在、書簡類の電子化作業は完了して、そのリストと解説について、南山大学宗教文化研究所の『研究所報』27号に研究ノートとして掲載されることになった。静坐社の書簡や蔵書については、宗教文化研究所の図書室に寄贈が決定している。前年度に見つかった佐藤通次の書簡は、ここに含まれている。 ②上記の書簡整理から人脈の調査をおこなった。前年度までに判明していたルース佐々木、ドワイト・ゴダード、アダムズ・ベックに加え、さらに神智学協会関連の人脈など、新たな国内外の人脈が判明した。 ③アメリカへの調査旅行は、3月に行った。カリフォルニアにある「生長の家アメリカ合衆国伝道本部」での資料収集を行った。また、関係者への聞き取り調査を行い、戦中から戦後にかけて活躍する霊性思想家やヨガや禅の普及者に関して、貴重な情報を入手することができた。また、今後の継続的な資料閲覧許可をいただくことができた。 ④「生長の家」出版物については、古書を通じて購入を進めている。この団体の出版物は膨大であり、今後も収集を継続していく必要がある。 ⑤主要なものとして、以下の成果発表を行った。まず、初学者向けの解説書『近代仏教スタディーズ』(法藏館)に寄稿して、身体技法史研究の意義を論じた。また、採用一年目から継続してきた藤田霊斎について、論文として発表した。また「生長の家」に関する研究成果については、宗教学会などで発表を行って現状を報告した。岡田式静坐法に関しては、その著名な実践者である木下尚江に関して、日本思想史学会で発表することで一定の到達点を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は前年度に進めた藤田霊斎の研究を論文にまとめ、雑誌媒体に公表した。また、生長の家研究と静坐社の人脈調査についても当初計画していた目標を達成し、着実に研究を進めることができた。本年度に蓄積した調査をもとに、来年度はまとまった成果を提出することができると思われる。また、京都新聞や中外日報から、本研究に関連する事項についての取材があり、記事になった。本研究の内容の成果を一般に還元し、その意義を理解してもらうきっかけを作ることができた。以上の状況から、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
①静坐社資料の分析を行う。この資料は昨年度に整理と電子化が完了し、目録も刊行されることとなった。内容として膨大な書簡類が含まれており、その分析には集中的な文書解析が必要となる。 ②すでに行われた予備調査の段階で、イギリスの仏教や霊性思想の人脈と静坐社は比較的関係が薄いことがわかった。むしろ、アメリカとインドの人脈に関してさらに調査を進めることで、付随的にイギリス方面の人脈にも関係してくると考えられる。アメリカで重要な人物が、ルース佐々木(1892~1967)とドワイト・ゴダード(1861~1939)である。両者の書簡の内容をタイプに起こすとともに著作の収集を行う。アメリカ調査については、昨年度も行っているが、必要に応じて補足調査を行う。 ③オーロビンド・アシュラム(インド)の指導者ミラ・リシャール(1878~1973)について精査する。書簡の分析に加え、ミラの没した地であるインドのオーロビンド・アシュラムで、資料収集を行う必要がある。そのため、本年はインド行を計画している。 ④上記の研究に加え、昨年度まで進めた心身修養、ヨガ、新宗教(生長の家)研究も踏まえ、行を軸とした近代宗教史の総論的な見通しを公表して、本研究の成果を世に問うていく。具体的には、学会でのパネルの組織、論集の編集、単著の出版などを行う。国際学会への参加も行い、海外の研究者との成果の共有と研究ネットワークの構築を進める。
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Research Products
(9 results)