2015 Fiscal Year Annual Research Report
系統進化学的アプローチによる痒み感覚の獲得およびその生理機能の統合解明
Project/Area Number |
15J40220
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高浪 景子 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | GRP / GRP受容体 / 痒み / 知覚神経系 / 霊長類 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでGastrin-releasing peptide(GRP)/GRP受容体系を痒みのマーカーとして着目し、齧歯類における痒み特異的神経回路の同定を行ってきた。本研究ではこれまでの研究を基盤に、各脊椎動物モデルを用い、系統学的アプローチにより「痒み感覚受容の系統進化」を解明する。H27年度は、哺乳類のうち霊長類ニホンザルと真無盲腸目スンクスの知覚神経系における痒み伝達分子GRP/GRP受容体遺伝子・ペプチド発現解析を行った。 1. 霊長類ニホンザルの解析 これまでヒトを含む霊長類の脊髄におけるGRP関連の報告は乏しいため、本研究では、霊長類の脊髄や脳幹におけるGRP発現とその生理機能を明らかにする目的でニホンザルを用いた解析を行った。バイオインフォマティクス解析およびクローニングによりGRP遺伝子の同定を試みた結果、ニホンザルとヒトのGRPの一次構造は一致しており、GRP/GRP受容体遺伝子は霊長類間で高い相同性を示した。免疫組織化学解析の結果、脊髄後角や三叉神経知覚核においてGRP免疫陽性線維の特異的な投射がみられ、その部位でGRP受容体タンパクの発現を認めた。 2.真無盲腸目スンクスの解析 他の哺乳類モデル動物である齧歯類マウス・ラットとスンクスの比較組織学的解析を実施した。トルイジンブルー染色により、スンクスの脳幹アトラスを作成したところ、齧歯類マウス・ラットに比べ、スンクスの脳幹尾側部が扁平であり、三叉神経知覚核および三叉神経節が特に発達していることが分かった。免疫組織化学解析の結果、スンクス・マウス・ラットともに脊髄後角や三叉神経知覚核において、GRP免疫陽性線維の特異的な投射がみられ、その部位でGRP受容体遺伝子発現およびタンパク発現を認めた。 以上の結果から、知覚神経系においてGRP/GRP受容体系が哺乳類において痒みの伝達に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は哺乳類の解析を目標としており、本研究により、哺乳類のうち霊長類・真無盲腸目・齧歯類の知覚神経系においてGRP/GRP受容体系の遺伝子・ペプチド発現の同定が完了し、GRP/GRP受容体系がこれらの哺乳類において普遍的に痒みの伝達に関与することが示唆された。以上の理由から、研究はおおむね順調に進展しているものと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は魚類・両生類のゲノムデータベースから、GRP/GRP受容体遺伝子と予測されるペプチド配列の同定を行う。同定した魚類・両生類のGRP遺伝子配列を元に、プライマーを作成し、知覚神経組織におけるGRP遺伝子発現の有無を調べる。また、同定したペプチド配列を基に、免疫組織化学法を用い、知覚神経系におけるGRP発現・局在分布を明らかにする。受容体に関しては、GRP発現細胞の投射先の領域において、GRP受容体遺伝子発現およびGRP受容体タンパク発現解析を実施する。
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Research Products
(17 results)
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[Presentation] 形態学解析から考える痒みの伝達機構2016
Author(s)
高浪景子,松田賢一,河田光博,坂本竜哉,坂本浩隆
Organizer
第121回日本解剖学会総会・全国学術集会
Place of Presentation
ビッグパレット福島(福島県郡山市)
Year and Date
2016-03-28 – 2016-03-30
Invited
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