2017 Fiscal Year Research-status Report
漏洩情報の量に基づくセキュリティ解析を可能とする情報量指標の開発
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15K00017
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
楫 勇一 名古屋大学, 情報連携統括本部, 教授 (70263431)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ハッシュベース電子署名 / データ認証 / 安全性証明 / 指紋関数 / ブロックチェーン |
Outline of Annual Research Achievements |
電子署名に代表されるデータ認証の実現には,非常に複雑な数学的構造の利用が不可欠であると考えられてきた.一方,利用毎に鍵情報の漏洩を許し,鍵管理の運用を工夫することでデータ認証に類する機能を実現可能であることが指摘されており,具体的な一手法として,ハッシュベース電子署名の研究が行われている.平成29年度の研究では,ハッシュベース電子署名の改善に資する二つの改善技術について取り組みをおこなった. 1つ目の取り組みは,ハッシュ連鎖の部分構成に基づく計算量の削減方式の検討である.平成28年度までの研究で得られた定数和指紋関数との組み合わせを前提に方式の具体検討を進め,従来方式に比べ,計算量を大きく削減できることが確認できた. 2つ目の取り組みは,ハッシュ連鎖のパンクチャリングによる署名長の削減方式の検討である.鍵生成時にハッシュ連鎖を余分に作成しておき,署名対象メッセージに応じ,その連鎖の何本かを棄却して署名の構成を行う.署名の種類が組み合わせ数的に増加する効果が生じるため,設計パラメータを小さく取ることが可能となり,ハッシュベース署名の効率改善に大きな効果が生じることが明らかとなった. さらに,初期計画にない取り組みとして,ハッシュ連鎖およびブロックチェーンに関する研究に取り組み,複数の組織をまたがって資格認証等を行うための枠組みについて検討を行った.仮想通貨として知られる Ethereumの smart contractの仕組みを用い,ユーザの持つ資格や肩書を検証可能・変造不能となる形で公開する方式であり,ブロックチェーン技術の新しい応用方法を示唆する萌芽的な結果が得られている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期の計画では,セキュリティ解析を可能とする情報量指標の開発を平成29年度の目標としていたが,ハッシュベース署名に関する研究が平成28年度中に著しく進展したため,当初計画を変更し,ハッシュベース署名に関する研究に注力することとした.同署名方式は省電力小型機器での利用が期待されており,また,量子計算機等への高い耐性が期待されて等,理論的にも実用的にも重要な研究課題である.本研究における取り組みにより,シンプルで証明可能な安全性を持つ方式が構築されつつあり,関係分野に大きな貢献をもたらすことができている.
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Strategy for Future Research Activity |
国際会議等の開催スケジュールの関係で,一連の研究成果の主要部分について,外部発表等が行えていない.実質的な研究開発についてはほぼ完了しているため,あとは成果発表を取りまとめ,国際会議,論文雑誌等において発表することを計画している.
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Causes of Carryover |
国際会議等の開催スケジュールの関係で,研究成果の外部発表が平成30年度にずれ込むこととなった.次年度使用額の全額を,国際会議発表旅費として使用する計画である.
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