2017 Fiscal Year Research-status Report
高速シミュレーション技法を援用したリアルオプションの実用化に関する研究
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15K00039
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
兼清 泰明 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (90217068)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シミュレーション工学 / リアルオプション / 確率システム / 確率制御 / 高速シミュレーション / 確率測度変換 / インフラ劣化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29(2017)年度は本研究の研究中間年であることを鑑み,当初計画全体の中での第2年までの進捗状況を総括したうえで計画を必要な範囲で微修正し,研究後半に向けて進めていくことを中心に考察検討を行った.まず,平成28年度から考察を進めていた基本モデルの実用的問題への整備についてモデルの細部の整備について引き続いて検討を行った.これにより査読付論文への投稿を平成30年度中の投稿に切り替えることとした.次に,本研究の中枢を成す高速シミュレーションスキームの構成について,特にスキームの最適構成に主眼を置いて数学的な側面からの考察を行い,計算機への実装を試みた.この結果,理論上シミュレーションを最も効率的に加速できるスキーム構成は,計算機への実装という点で,収束を効率的に加速できない場合もあるということが明らかとなった.計算機上の処理における誤差の混入が効率化を妨げている可能性もあるため,近年注目を集めている多倍長精度計算を組み入れることも検討していくこととなった. さらに,本研究におけるプロジェクトの1つに位置付けている,社会インフラの経年劣化現象に関して,平成29年度は特に橋梁を対象として劣化現象の数理モデル化と補修方策の高信頼化について深く考察し,前者についてはその成果の一部を「第30回記念信頼性シンポジウム(日本材料学会主催)」で口頭発表を行い,土木学会論文誌に査読付論文として投稿して掲載された.さらに土木学会応用力学シンポジウムと全国大会において口頭発表を行った.さらに,本研究で具体的に応用の対象としているプロジェクトのひとつとして,橋梁の保守管理方策の最適化に関する研究を進めて,その成果の一部を構造物の安全性・信頼性に関する国際会議(ICOSSAR 2017)で発表を行うとともに論文(査読付)を掲載した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で考察を進めてきた高速シミュレーションスキームの最適構成を与える数学的原理について,計算機への実装上従来法よりもよいパフォーマンスが得られないケースもあり得ることが明らかとなったため,スキームの構成と計算機への実装について,当初の計画よりも研究の遅れが生じている.しかし,幸い平成28年度および平成29年度の研究において,本研究の最終的な目的であるリアルオプションを基軸とした実用的問題への応用におけるモデル化に関する考察を先に進めることができたため,全体としては計画していた研究の内容を最終年度である平成31年度までに終えることができると現時点では考えている.この点で,当初の研究計画の順序に多少の変更が生じているという点を除けば,研究の進捗状況としてはおおむね順調に進んでいると結論付けてよいと考えている. 平成29年度の研究において,計算機へのシミュレーションプログラムの実装において浮動小数点計算法での誤差が深刻な影響を与えるケースがあり,多倍長精度計算によってその改善が行える可能性を見出すことができた.これは当初の計画では想定していなかった成果であり,これにより計算機への実装上生じた問題の解決を模索していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30(2018)年度の研究においては,研究中間年にあたる平成29年度の研究において実施した中間総括の結果を踏まえて,当初計画から順序を少し変更して,高速シミュレーションスキームの実用問題への応用を想定した最適選定方策の整備を平成29年度から引き続き行い,それと並行する形で,構築したスキームの確率制御問題への組込みの理論的整備と計算機への実装,についての研究をまず重点的に進める.実用的応用へのモデル化の整備については,平成28年度から29年度の研究でおよその目処がついているので,シミュレーションスキームの実用的応用モデルへの適用とそれに付随して発生する諸問題の解決策の構築,を第2の主要テーマと位置付けて研究を進める予定である. 本研究で応用例の中心と位置付けているインフラなどの保守整備計画への本提案手法の応用という問題については,平成30年度中の査読付論文への投稿を目指す.さらに,その他の実用的諸問題,特に従来のリアルオプションアプローチで満足のいく解決が得られていない問題への本手法の適用を試み,成果の査読付論文への投稿を目指す.
以上を平成30年度にうまく遂行できれば,研究最終年度である2019年度の研究の総まとめに向けて,当初計画で設定していた予定実施内容にほぼ沿った形で進めると考えられる.
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Causes of Carryover |
平成29(2017)年度の研究において,数値計算スキームの開発ならびにデバッグには当初の構想よりもかなり多くの労力が必要となると想定して,予定していた旅費の使用を抑え,プログラム開発やデバッグ結果の検証のために必要となる謝金を増額する計画であったが,理論面での考察に時間を要したため,その作業は平成30(2018)年度に主に引き継ぐ計画である.すなわち,平成30年度は,やはり予定していた旅費の使用額を抑え,その分をプログラム開発やデバッグ結果の検証のための謝金の増額にまわすことを計画している.また,プログラム開発に関する助力を得る上で,平成29(2017)年度に追加購入した計算用WSに加えて,データ解析等の作業用のPCを購入する必要があると考えている.したがってこの費目への予算の増額も検討している.
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