抗がん剤の最適投与スケジュールの探索と決定のための統計的なデザインと推測法の開発

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K00058
• Research Institution: Hyogo Medical University
• Principal Investigator: 大門 貴志 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (40372156)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: がん臨床試験 / 用量探索 / スケジュール探索

Outline of Annual Research Achievements

抗がん剤治療が成功するためには，その最適な用量及び投与スケジュールが大きな鍵を握る．本研究では抗がん剤の最適な用量とともに投与スケジュールを探索・決定するための統計的なデザイン及び推測法を開発することを目的としている．本年度では，既存の統計的なデザイン及び推測法をはじめ，その周辺の話題とともに最新の話題を国内外の統計・臨床論文から洗い出した．現在，それらを整理して成書として公表すべく執筆中である．また，そこで整理した方法論のうち実地での適用可能性やニーズの高いものについて，プログラミングを行い，シミュレーション及び文献例で再評価した．その結果を踏まえていくつかの新しいデザインを開発中である．例えば，抗がん剤治療の場合，投与スケジュールに注目すると，投与を行う日と投与しない日を組み合わせた数週間程度の周期を設定して投与を行う．この周期を「1コース」などの単位で数え，一連の治療として数回繰り返して行われるのが一般的である．副作用が強く出た場合には，用量を調整，投与を休止及び中止することもある．これまでの用量探索研究では，最初の1コースで得られた用量と毒性反応に関するデータに基づいて最適用量が探索・決定されてきた．しかしながら，患者の貴重なデータを完全に活用するには，投与スケジュールに関するデータも考慮できる形式で発展させる必要がある．このことを踏まえて，各コースでの毒性が発現するまでの時間(time-to-toxicity)に注目して，既存の方法を改良を重ねているところである．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本研究の目的を達成するために，当該年度では，(i) 最適な用量とともに投与スケジュールを探索・決定するための既存の統計的なデザイン及び推測法について，最近の関連論文を洗い出す．これらについてプログラミングを行い，シミュレーション及び文献例で再評価し，問題点を摘出する，(ii) (i) で摘出した問題点の解決策を与える統計モデルの構築を行う，(iii) 開発したデザイン及び推測法について，シミュレーション及び文献例により，動作特性及び性能について既存のデザイン及び推測法と比較・評価し，実地での適用可能性を検討する，(iv) 本研究の成果を学会で発表し，国際誌に論文を投稿・公表する，ことを主に計画していた．当該年度では，(i)，(ii)，(iii) について進行中であり，(iv)を達成できていない．それ故，上記の区分のように判断した．ただし，本研究の来年度へ向けての深耕の礎はできたと考えられる．

Strategy for Future Research Activity

すでに本年度で確立・活用している，研究代表者，国内研究協力者，海外研究協力者からなる研究体制を生かして，国内研究協力者からは，臨床的視点からの本研究に関する意見や助言を，海外研究協力者からは，統計的視点からの本研究に関する意見や助言を獲得し，本研究を加速させる．

Causes of Carryover

次年度使用額が生じた大きな理由は，国際学会への出席・発表を計画していたにもかかわらず，所属機関での業務過多によりその計画を実行に移せず，計上していた旅費を使用できなかったことである．

Expenditure Plan for Carryover Budget

所属機関での業務を調整し，研究のためのエフォートを確保し，国際学会への出席及び発表を遂行し，助成金を計画通りに使用する．