2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K00114
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
藤井 雅弘 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20366446)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 位置推定 / スマートフォン / センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,スマートフォンを用いた高精度な位置推定技術について検討を行っている.移動体の位置推定技術は絶対位置推定と相対移動推定の2つに分類することが出来る.絶対位置推定は,端末の絶対位置を推定する技術であり,代表的な手法としてGPS (Global Positioning Systems)がある.さらに,インフラ設置された無線LANなどの無線信号の受信強度を用いてGPS信号の観測が困難である屋内のような環境でも絶対位置の推定が可能である.これらの絶対位置推定技術はその高精度化が必要とされ,現在も研究開発が進められている.一方で相対移動推定は,端末に搭載された加速度やジャイロといったセンサー情報を用いて,単位時間でのある地点から別の地点への相対移動を計測する技術である.相対移動は,移動距離と移動方向に分類され,それらを高精度に推定する必要がある.相対移動推定値は絶対位置推定を補完する役割があり,これら2つの推定技術は有機的に接続されることで移動体の高精度な位置推定が可能となる. 本研究課題では,これらの要素技術であるGPSと無線LAN,各種センサーを統一的に扱う事ができ,また,実用上非常に有効なスマートフォンのプラットホーム上での高精度な位置推定を確立することを目的としている.絶対位置推定技術と相対移動推定技術の融合のためには,まず,それぞれの推定における誤差を定性的に見積もる必要がある.この見積もられた誤差の程度に応じてシステムが自動的にそれぞれの推定を有機結合し,その環境において,最も適した位置推定値を出力する.この結合手段としては適切なフィルタを用いることでスマートフォンの処理系で可能な処理を行う.また,スマートフォンは通常,ネットワークに接続されているので,スマートフォン上で観測出来ない蓄積された情報を拠り所にしてさらに位置推定精度の向上を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は当初の目的・実施計画に照らしあわせた絶対位置推定の高精度化に特化して研究を行ってきた.GPS測位精度を向上させるための技術として,GPS信号が持つ統計的な付帯情報を取り扱う手法と,システム外での観測を付加情報としてその絶対位置推定精度の向上させるための研究を行った.GPS測位においては衛星からの信号に含まれる衛星位置情報とその送信時刻と,その信号を観測した時刻から衛星と端末間距離を算出し,三辺測量の原理で端末の位置を推定している.この際,付帯情報として受信信号強度も観測出来る.通常のGPS測位では受信信号強度は活用されないが,本研究課題においてこの活用を提案し,測位精度の向上を行った.受信信号強度が小さい場合,その信号から算出された距離はより大きい誤差が含まれると考えられる.そこで,観測地点の位置が既知で比較的安定的に観測可能な電子基準点での国土地理院のGPS観測信号データベースを利用し,受信信号強度と測距誤差の関係を定量的に評価した.この結果,予期した通り,受信信号強度が小さくなると測距誤差が大きくなることが明らかとなり,この関係性を汎用な関数で表現する手法を提案した.ここで作成した汎化関数を,他の電子基準点での観測データにも適用した結果,この付帯情報を用いない手法と比べて,大きな測位精度改善が可能であることを示した. また,GPSに依存しない無線LAN等の無線信号を用いた絶対位置推定において,新しい手法を提案し,また理論解析の新しい手法と比較することで提案手法の定性的な評価を行った. この比較から,本提案手法は理論限界には及ばないものの,従来手法と比較して良好な性能を達成する事を示した.また,これらの検討から絶対位置推定の改善の新しい知見を見出すことができたので,次年度以降にその目標に沿った新しい手法を検討する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では当初計画の通り,相対移動推定に関する研究に注力して検討を行う予定である.スマートフォンでは加速度センサー,ジャロセンサー,地磁気センサーの9軸センサーが一般に利用可能で,これらを活用する.航空機や自動車のように比較的センサーの姿勢が安定している場合での相対移動推定は既に広く実用化されている.しかしながら,スマートフォンのように人が手に持ったり,ポケットに入れて歩行している場合,スマートフォン上での姿勢の軸は安定していない事が常である.すなわちスマートフォンのセンサーの座標系を端末座標系として規定するとき,その系で観測されるセンサー値はそのままでは相対移動推定に利用することは困難である.そこで,端末座標系を地球上での座標系に変換する事を考える.これはスマートフォンの姿勢を推定することと等価であり,これまでも幾つかの手法が検討されている.しかし,本研究課題での目的はスマートフォンを持って移動している歩行者の相対移動,すなわち相対移動距離と相対移動方向を推定することであるので,地球座標系に変換されたセンサー値もそのまま利用する事が困難である.そこで,歩行者の移動を特徴づける新たな座標系を導入し,地球座標系から歩行者座標系にセンサー値を変換する新しい手法を検討する.この手法により,移動にともない様々に変換するスマートフォンの座標系に依存せず,歩行者の相対移動推定が可能になると考えられる.地磁気センサー以外のセンサーは外乱の影響を受けにくく,絶対移動推定に比べて安定的な推定が可能であるが,歩行者の移動挙動によってはその誤差にはばらつきを生じると考えられる.そこで,相対移動推定の誤差を見積もるために,移動挙動をクラス化し,挙動判別も取り入れ誤差を見積もる手法を検討する.
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Causes of Carryover |
平成27年度の中盤において,本研究課題の採択が決定したために,それまで行って来た初期検討において成果は出ていたものの,国際会議や論文投稿等の投稿経費等の予定がそれらの日程と整合できず,使用額の残額の平成28年度への繰越が発生した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に発生した次年度使用額に対しては,現在,関連する国際学会に投稿準備中であり,平成28年度においては遅滞なく当初予定の研究計画を実施可能である.
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Research Products
(5 results)