2015 Fiscal Year Research-status Report
分子シミュレーションで探るヘテロ2量体ABCトランスポーターの非対称ダイナミクス
Project/Area Number |
15K00400
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
古田 忠臣 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (10431834)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ABCトランスポーター / ATP / 基質 / 輸送 / 分子シミュレーション / 構造機能相関 / ホモ・ヘテロ |
Outline of Annual Research Achievements |
ABCトランスポーターは、ATPの結合・加水分解・解離エネルギーを用いて、薬剤、イオン、ペプチドなど様々な物質を輸送する膜タンパク質である。細菌からヒトまですべての生物に存在し、多剤耐性の原因(創薬ターゲット)として大変注目されている。中でも2ヶ所あるATP結合ポケットの一方が非加水分解型となっているヘテロ2量体ABCトランスポーターにおける原子レベルでの構造変化メカニズムおよびその基質輸送サイクルの詳細は未だ明らかになっていない。そこで、本研究では、ヘテロ2量体ABCトランスポーターの中から近年結晶構造解析された細菌のTM287/288および構造未知のヒトCFTRを対象として、ATP・基質の結合・非結合状態の分子シミュレーションを実行することにより、統一的な視点からその構造に関する非対称ダイナミクスの解明を行うことを目的とする。 本年度は、まずTM287/288に関してATP結合状態に着目した解析を行った。結晶構造では一方のATP結合ポケット(ABP1)にのみATPアナログが結合しており、この構造を基に異なるATP結合状態での複数のシミュレーションを実行した。その結果、ATPが両方のポケットに結合した状態ではABP2側でNBDsが閉じ、ABPの形成が観測された。一方、ABP1のみATPがある系やapo状態の系では、ABPの形成は観測されなかった。ABP1のみATPがある系は、結晶構造に相当し構造変化は小さく安定であった。そして、apo状態の系は、NBD二量体形成とは異なる、サブドメインの接近が観測された。このapo状態において観測されたNBDsが少しシフトする運動は、ヘテロ2量体ABCトランスポーターでのATP結合前状態に関する重要な知見であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画であるTM287/288に関する解析を進め、主にATP結合に伴う構造変化(ABPの形成)に関する結果を得ると共に、apo状態においてATP結合前状態に関する重要な知見も得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
さらにTM287/288に関する解析を進めると共に、当初の計画にあるヒトCFTRに関する基質輸送メカニズムに関する解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画の解析が概ね進んだことにより計算機利用費の一部を次年度へと繰り越したため、および物品購入を次年度へと変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した計算機利用費を有効に活用しさらに解析を進めると共に、計画にある解析用PC等の購入に充てる予定である。
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Research Products
(10 results)