2017 Fiscal Year Research-status Report
分子シミュレーションで探るヘテロ2量体ABCトランスポーターの非対称ダイナミクス
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15K00400
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
古田 忠臣 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (10431834)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | CFTR / 変異 / 疎水性クラスター / 分子シミュレーション / 構造機能相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
ABCトランスポーターは、ATPの結合・加水分解・解離エネルギーを用いて様々な物質を輸送する大きな膜タンパク質スーパーファミリーの一つであり、細菌からヒトまですべての生物に存在し、多剤耐性の原因など創薬ターゲットとしても現在大変注目されている。約50種あるヒトABCトランスポーターの20種以上が2ヶ所あるATP結合ポケットの一方が非加水分解型となっているヘテロ2量体ABCトランスポーターである。これら非対称なヘテロ2量体ABCトランスポーターにおける原子レベルでの構造変化メカニズムおよびその基質輸送サイクルの詳細は未だ明らかになっていない。そこで、本研究では、ヘテロ2量体ABCトランスポーターTM287/288およびCFTRを対象として、分子シミュレーションを用いた構造ダイナミクスの解明を行うことを目的とする。 本年度は、当初の予定であるCFTRを対象とし、重篤な疾患であるΔF508変異に関する解析を進め、論文[Odera et al., Biophys. Physicobiol. 15, 33-44 (2018)]として出版することができた。CFTRの遺伝性変異は、嚢胞性繊維症(CF)の原因であり、中でもΔF508はCF患者の90%を占める最も有名な変異である。天然体とΔF508変異体の分子シミュレーションによる比較の結果、変異によりATP結合ドメイン(NBD1)と細胞内側ループ(ICL4)との間の疎水性クラスターが崩壊することおよびATP結合ドメイン間(NBD1-NBD2)の界面にも影響することが判明した。本研究で得られたこれらの知見は、ABCトランスポーターの構造ダイナミクスに重要な洞察を提供するであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CFTRの重要な変異に関する研究成果が無事出版され、ABCトランスポーターの構造ダイナミクスに関する重要な知見が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまではCFTRの構造が実験的には得られていかったためモデル構造での計算を進めてきたが、最近、CFTRのCryo-EM構造がATP結合状態およびapo状態で得られた。そこで、さらなる基質輸送サイクルの解明に向け、これら最新の構造を基に解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
本研究の遂行には、計算機(スーパーコンピュータ)の利用が必須である。しかしながら、今年度中旬に本学スーパーコンピュータがTSUBAME2.5からTSUBAME3.0へと大幅に変更され、移行における一定期間の中断や安定な稼働等に数か月を要した。よって、今年度予定の一定部分を次年度へと移行することになった。今後の計算機利用・学会発表等に有効に活用して行く予定である。
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Research Products
(6 results)