2016 Fiscal Year Research-status Report
手書き文字自動採点システムの実用化に向けた運用実験
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15K00497
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Research Institution | Gifu Keizai University |
Principal Investigator |
井戸 伸彦 岐阜経済大学, 経営学部, 准教授 (30340061)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | e-ラーニング / 漢字検定 / 手書き文字入力 / 自動採点 |
Outline of Annual Research Achievements |
漢字検定相当の試験の自動採点を行うシステムを実際の大学教育で運用し、教育成果を上げることを目標に、報告者は研究とシステム開発とを進めてきた。27年度までに科研費を頂いて購入したタブレット端末を用い、報告者が大学で担当する授業にて該システムを受講生が実際に用いる試行運用を行った。 28年には、二つの大きな環境の変化があった。ひとつは、漢字の正誤の判定の基準を具体的かつ詳細に記した文書「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について」が、2月29日に文化庁より発表されたことである。これにより、漢字検定相当の自動採点システムを国語の観点から実用的なものとすることが可能となった。その意味で文化庁文書は本研究を大きく前進させるものである一方、文書内のすべての基準を判定できるようなシステムでないと実用的とは言えないという、ハードルを上げた側面もある。このため28年度の報告者の労力の大半を割いて、文化庁文書に記載されたすべての基準をチェックするための機能変更と採点情報の再構築を行った。 大きな変化の二つめは、実用化に向けた企業等との協力関係強化が進展していることである。27年度より協力関係にある(株)日立公共システム様および(株)日立製作所様の営業部を通じてのアプローチにより、最も有力なユーザーとなり得る組織の執行役員との会合が29年2月17日に実現した。当日は該組織本部に訪問して漢字書き取り採点に関して意見交換を行いながら、当方のシステムについてプレゼンテーションおよび持参したパソコン等の機器を用いての自動採点のデモを行った。わざわざ採点の責任者をその場に呼んで頂くなど、提案システムのCBT(Computer-Based Testing)への適用に向けて好感触を得ることが出来た。今後、日立公共システム様日立製作所様と相談して、引き続き該組織へのアプローチを行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度まででは、試行運用による評価実験を計画通り行ったこと、画数フリー化などの計画していた機能追加がほぼ完了したこと、タブレット端末を用いた運用環境を整えたことなどはおおむね計画どおりに進捗し、採点情報の作成が計画よりもやや遅れていた。 28年度は、上述の文化庁文書が発表されたことにより採点の見直しが余儀なくされたことで、ほぼ1年を費やして文化庁文書の採点基準に向けた機能変更と採点情報の再構築を行い、機能変更については29年5月中に終了予定である。これは当初計画からは大きな後れであるが、文化庁文書記載の採点基準に対応しているという観点からは予定外の進歩を遂げたことと評価している。機能変更に伴い後ろ倒しとなった採点情報の再構築については、4月中旬現在、文字数ベースで1.3%(JIS第一水準2965文字中39文字)だが、部首などの部品単位で採点情報を作成しているという観点からの部品カバー率は15.1%(325部品中49部品)である。当初予定より半年程度遅れているが、部品のカバー率が上がることで漢字ごとの作業は省力化が図られるため、今後加速出来ると考えている。また、作成した採点情報についても文化庁文書に対応しているという点で、当初の計画より進歩した内容になっていると評価している。 遅れている事項としては、現在パネル入力で行っているひらがな入力の手書き入力化がある。28年度内に検討・実装する予定であったが、採点情報への対応等により工数が割けなかった。29年度前半に実施する予定である。 また、商用化に向けた作業としての特許戦略においては、国際出願特許(PCT/JP2014/054642)の現地化作業として、香港出願記録請求とともに中国国家知識産権局への実体審査請求を行った。同特許の日本国内審査請求も行い、審査の結果、補正手続き書の提出により成立の見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
(株)日立公共システム様および(株)日立製作所様との連携を軸として、実用化(商用化)に向けた研究開発に注力していく。上述のとおり有力ユーザー様と今後継続した会合を持つことが出来ることは大きな前進であり、該ユーザー様のご意向を確認しながら研究開発の優先順位を決めていく予定である。具体的には、29年度5月末に自動採点サービスを開放する形でユーザー様に使って頂くことを提案するための作業に注力し、これと同じバージョンのシステムを所属大学での29年度前期授業にて実用運用に供していく。当初は予想もしていなかった文化庁文書の発表により大きな影響を受けたが、29年度実用運用の目標は達成できる見込みである。 実用化に向けた作業に忙殺されて十分に行えて来なかった学会発表についても、実用運用の結果を発表していく予定である。 商用化に向けた工程の中で、システムのUIやセキュリティなどについては(株)日立公共システム様に担当頂ける方向で調整しており、今後具体化していく。
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Causes of Carryover |
当初計画に含まれていなかった市販フォントを商用二次利用ライセンス料について、昨年度末時点は100万円弱を見込んでいたが、webシステム向けライセンスに絞ることにより397,440円の支出となった。また、文科省文書対応のために学内での実用運用は29年度となり、タブレット端末購入も先送りとなった。一方で採点情報作成作業の効率化のために大型モニタと高性能パソコンの前倒し購入等を行ったが、合計額としては次年度使用が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
自動採点システムの学内実用運用に向けて、現在8台のみのタブレット端末を追加購入する予定である。また、作成した採点情報の試用による確認作業を学生アルバイトにより実施する予定である。以上より、タブレット端末および周辺機器代とし約120万円、アルバイト代約20万円を、29年度に支出することを現状では予定している。
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