2015 Fiscal Year Research-status Report
アドホック/センサーネットワークの技術を応用したタブレット教育環境の構築
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15K00504
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Research Institution | Kagawa National College of Technology |
Principal Investigator |
高城 秀之 香川高等専門学校, 通信ネットワーク工学科, 准教授 (30261118)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 電子教科書 / タブレット / アドホックネットワーク / センサーネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、タブレット端末の教育現場への導入が進んでいる。一方、教育現場によっては、無線LANのアクセスポイントやデータ収集用のサーバを設置することが困難な場合がある。本研究では、タブレット端末のみでアドホック(※「その場で」の意味)ネットワークを構築することでネットワークのインフラが無い環境でもタブレットを活用した授業を実施できるシステムを構築する。また、本研究で開発するシステムでは、タブレット端末を一種のセンサーとみなし、センサーネットワークの技術を応用し授業中における学生の学習状況を逐次モニタリングすることで、リアルタイムに学生の理解度を把握し、授業中に再度説明したり、補足したりすることが可能となり、学生の理解度の向上を図る。 本研究では、学生はタブレット上の電子教科書を用いて学習を行う。また、同電子教科書には小テストを埋め込む。そして、ネットワークを利用してこの小テストの結果を教師がリアルタイムに把握できることをねらっている。平成27年度はまず、同電子教科書のフォーマットとしてEPUB3を採用することを決定し、プロトタイプとなる電子教科書の作成を行った。EPUB3を採用した理由は、同技術がHTML5をベースとしており、既存のWeb技術を活用できるからである。特に、HTML5技術の構成要素の1つであるJavaScript(プログラミング言語)を利用できる点が重要であり、これにより、既存の紙媒体の教科書では不可能であった、学習状況や小テストの回答をリアルタイムに教師の端末に送信することが可能となる。H27年度はWebSocketとよばれる非同期通信技術を用いて、端末間のリアルタイム通信に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で開発するシステムは、アドホックネットワーク部とセンサーネットワーク部から構成される。当初の予定では、先にアドホックネットワーク部の開発を行い、その後、センサーネットワーク部の開発に移る予定であった。一方、アドホックネットワーク部のコア技術であるアドホック通信については、現在、WebRTCとよばれるブラウザ間通信技術が規格化されパソコン上のブラウザへの実装が進んでいる。このことからタブレット上のブラウザでも利用可能になることが予想され、このWebRTCをアドホックネットワーク部のベース技術に採用することを検討した。アドホックネットワーク部を完全独自に実装するよりも開発効率が高いうえ、本研究で使用するiPad以外のタブレットにおいても本研究で開発中のシステムを利用可能となることがその理由である。このことから、当初の予定を変更して、先にセンサーネットワーク部の開発を行い、アドホックネットワーク部を後に回すことにした。 センサーネットワーク部については、タブレット上の電子教科書に対して学生が行った操作を、ネットワークを介して外部に送信することができるかどうかが重要である。本研究では電子教科書のフォーマットとして、Web技術をベースとしたEPUB3を採用することに決定した。また、通信には、リアルタイム性の観点からWebSocketと呼ばれる通信方法を採用することにした。 これらの技術を用いて電子教科書のプロトタイプを作成し、タブレット上の電子教科書に対する操作を外部に送信し、モニタリングすることに成功した。以上から、研究の実施順序の変更に伴う開発の遅れはあるものの、全体の進捗状況としては概ね予定通り進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の開発を継続し、まずは研究代表者が担当しているプログラミングの授業用の電子教科書を作成し、小テストの埋め込みを行い、実際の授業でその有効性を検証する。 また、実際の教育では、小テストの結果などは単に授業中にリアルタイムに把握するだけでなく、後の分析にも利用できることが望ましいことから、簡易E-learningシステムを作成し、同システムへの学習状況や成績の保存ならびに管理を行う。 アドホックネットワーク部については、本年度の途中の状況を見て、本科研費交付期間中にiPad上でのWebRTCの利用が望めないと判断した場合は、iPadのオペーレーティングシステムであるiOS上のP2Pライブラリを用いて独自の実装を行う。ただし、将来的にはiOS上でのWebRTCの利用が可能になることが予想されるため、アドホックネットワーク部と、他のサブシステムをできるだけ分離して実装することで将来的な変化にも対応できるようにしたい。
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Causes of Carryover |
本研究に占める物品購入費はシステム開発用のパソコン(iMac)と学生が授業で使用するタブレット(iPad)から構成される。iPadを授業で使用する場合、購入年度が異なるとiPadの性能差や機能差が生じてしまう可能性があるため、できるだけ同一機種を一度に購入した方がよいと判断した。そのため、平成27年度はシステム開発用のiMacの購入にとどめ、iPadの購入は平成28年度にまとめて行うことにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に研究で使用するすべてのiPadを購入する。
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