2016 Fiscal Year Research-status Report
気候変動下の日本における感染症媒介蚊の個体群動態予測
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15K00526
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
太田 俊二 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (10288045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 眞 早稲田大学, 人間科学学術院, 助教 (90754573)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地球温暖化 / 感染症 / 感染症媒介生物 / 個体群動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
感染症媒介生物のうち、温帯性のイエカ(Culex pipiens)の生活史にもとづく季節的消長を表現するようなモデルはほとんど存在しない、一方で、熱帯性の媒介蚊の研究は進みつつあるものの、地球温暖化の進行とともに急拡大すると考えられる温帯域の媒介蚊の挙動に関する研究はほとんどないと言ってよい。本研究課題の最大の柱である個体群動態モデルを課題期間の2年目までに作成することを目標に研究を展開してきた。 東京・新宿区で10年以上にわたって採取されたイエカのデータを最大限に活用し、パラメーター推定を行い、個体群動態モデルを作成した。温帯性の生き物であるため、冬季の休眠機構のモデル化は必須である。同時に十分な降水量があることから、水条件を無視することも考えられるが、本研究課題では熱・水収支モデルを基礎として、過剰な水によって卵や幼虫が流されるという多くの報告事例を、本モデルに組み込んだ。対照として、休眠状態を無視したモデルを作成したところ、温帯性の蚊の動態を十分に再現することはできなかった。次に本番用の今回開発されたモデルを用いて、最近3年間のイエカの季節的消長をシミュレーションしたところ、その再現性が非常に高いことを確認した。 そこで、MIROC5の出力を用いてhirorical~将来気候下でのイエカの挙動をシミュレートした。その結果、主に夏の温度上昇により、イエカの個体群はかなり小さくなることがわかった。従来の研究では温暖化とともに感染症リスクが高まることがよく指摘されてきているが、本研究の結果はまったく反対の状況になることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個体群動態モデルの開発にとどまらず、将来気候下での感染症媒介生物の挙動のシミュレーションまでを一体化した成果を国際誌に掲載することが決まった。概ね予定どおりに研究を推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
将来予測のヴァリエーションを増やし、数十年後の日本の感染症媒介蚊の挙動の再現に力を入れていきたい。
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Causes of Carryover |
導入予定の機器を変更したこと、謝金が発生する研究業務が少なくなったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
オープンアクセス費用が予定よりも多くなる。また、大量のデジタルデータの処理が発生するため、大学院生への謝金に活用する。
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Research Products
(8 results)