2016 Fiscal Year Research-status Report
姉妹関係にある外来種と固有種の可塑的・遺伝的形質の種間比較による侵略機構の解明
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15K00565
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小西 繭 信州大学, 理学部, 博士研究員 (00432170)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国内外来種 / 絶滅危惧種 / 種間比較 / 遺伝的撹乱 / 種の置換 / 繁殖形質 / 分散形質 / マイクロサテライト解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内外来魚モツゴは、姉妹関係にある日本固有種シナイモツゴと置き換わりながら急速に分布を拡大した。本研究では、モツゴの侵略メカニズムの解明を目的として、これまでの研究成果に基づいて選んだ可塑的・遺伝的形質に焦点を絞り、集団遺伝学的解析、系統地理学的解析、行動実験、ならびに飼育実験により徹底的な種間比較を実施する。本年度は、以下の3つを実施した。 1.繁殖生態の種間比較:ふ化後1年経過した個体の成熟の程度を種間において比較するために、野外集団より採卵し、実験室において飼育している。今後、生殖腺重、体サイズ、成熟個体出現頻度を調べるために飼育魚を固定し、「モツゴはシナイよりも早熟か」を検証する。 2.止水適応の行動実験I(低酸素耐性):昨年度確立した実験方法を用いて、鼻上げ時の溶存酸素量を2種間で比較した。鼻上げ時の溶存酸素量は両種とも体重と有意な負の相関を示した。溶存酸素量と体重の関係性を種間において比較したところ、2種に有意な違いは認められなかった。 3.止水適応の行動実験II(遊泳能実験):ある一定の流速下で遊泳能力を比較するための実験系を確立した。装置には市販の流しそうめん機を用い、供試魚の前進・後退の有無をスコア化し、種間で比較した。その結果、シナイモツゴはモツゴと比較して、定位する時間が長く、移動距離が短いこと、モツゴはシナイモツゴと比較して、上流下流の両方向に移動する行動が頻繁に観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工授精ならびに飼育によって、成熟タイミングの種間比較を達成するために必要なサンプルを十分量準備することができた。止水適応の行動実験IならびにIIを完了することができ、概ね想定していた結果を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
スニーキング行動ならびに飼育個体を用いた繁殖生態の種間比較を実施する。遺伝的解析、行動実験、飼育実験によって得られた成果の総合的考察し、論文化を進める。
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Causes of Carryover |
室外飼育用の大型水槽関連の消耗品について、当該施設にある物品を再利用することにより、当初の計画より経費の節約ができたため。初年度のDNA実験にやや遅れが生じ、消耗品の使用量が減ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度請求額と合わせて、実験補助者の謝金や消耗品の購入に充てる。また、成果公表のための印刷費や旅費にも使用する。
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