2015 Fiscal Year Research-status Report
渡り鳥飛来にともなう細菌群集の越境移動に関する環境微生物学的研究
Project/Area Number |
15K00571
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
見坂 武彦 大阪大谷大学, 薬学部, 准教授 (80397661)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 渡り鳥 / 細菌群集 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌の越境移動に関する現状の把握は、健康・衛生上、また生態系保全の観点から重要な課題の一つである。シベリアや東南アジア、オセアニアに存在する種々の細菌が渡り鳥とともに多量に越境移動している可能性があるがその実態は明らかではない。本研究では、渡り鳥の糞に含まれる細菌群集およびその遺伝子を培養に依存しない新手法で明らかにし、潜在的な病原細菌が長距離移動し、畜産業、農業、水産業ならびにヒトの健康リスクに与える影響について検証する。平成27年度は、渡り鳥の飛来にともなう細菌・遺伝子の移動を明らかにするための実験条件の検討を行った。大学キャンパス内、関西地区の民家、公園、水辺を中心に渡り鳥の糞試料を採取し、以下の検討を行った。 ①糞からの細菌およびDNAの回収方法の検討および群集構造解析:大学キャンパス内で鳥の糞を採取し、糞からのDNA抽出・回収を行うための実験系を作成した。 ②糞に含まれる細菌の現存量測定:核酸結合性蛍光染色剤を用い、染色剤の選定と染色条件の最適化を行った。寒天平板培地を用いた培養法による生菌数測定法も行い、糞試料中の細菌現存量に関する知見を得た。 ③糞に含まれる病原細菌のスクリーニングおよび抗生物質耐性菌の現存量および種類の解析:哺乳動物に病原性を示す細菌は、アメーバ内での増殖能を元に細胞共存培養系でスクリーニングすることができる。糞に含まれる細菌をアメーバに暴露し、生残・増殖できる細菌を同定した。また畜産業、水産業、医療で使用される代表的な抗菌薬の耐性菌について、現存量測定と同定を行った。 ④宿主の同定法の検討:鳥の糞には鳥のミトコンドリアDNAが含まれるため、その塩基配列から糞の宿主の鳥を同定する条件を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定でおり、①糞からの細菌およびDNAの回収方法の検討および群集構造解析、②糞に含まれる細菌の現存量測定、③糞に含まれる病原細菌のスクリーニングおよび抗生物質耐性菌の現存量および種類の解析を行い、条件検討をほぼ終了することができた。 また試料採取に適した地点の選定を進め、カモ科、ツバメ科、チドリ科については、関西地区にて多数の糞試料を収集することができた。平成28年度以降の研究計画に利用できる体制を整備することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に行った検討結果をもとに、フィールドでの研究を進める。春~夏および秋~冬にかけて、大学キャンパス内、関西地区の民家、公園、水辺において、毎年飛来が確認されているカモ科、ツバメ科、チドリ科等の種々の渡り鳥の糞を採取する。i)主にツバメを対象として、4月~7月にかけて、同一地点同一個体の糞を経時的に採取する。ii) 4~7月にかけてツバメ科、11月~3月にかけてカモ科、チドリ科を主な対象として同一種の異なる個体の糞を採取する。iii) 複数種の渡り鳥を対象として、4~7月、および11~3月頃にかけて糞を採取する。採取した糞試料を用いて以下の検討を行う。 ①糞に含まれる細菌の群集構造解析を行う。②糞に含まれる細菌の現存量測定を行う。③糞に含まれる病原細菌のスクリーニングを行う。④糞に含まれる抗生物質耐性菌の現存量および種類を解析する。⑤糞に含まれる宿主のミドコンドリアDNAを解析し、鳥を同定する。⑥得られたデータをもとに、渡り鳥の飛来にともなう細菌の移動量、細菌の属種について、鳥の種類間での違い、同一の鳥の種間での違い、同一の鳥の日本滞在中での変遷について検証する。GPSを用いた鳥の種類と飛行ルートなどの既知データと照合して、上記の研究結果を考察する。
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Causes of Carryover |
振込手数料が当初計画よりも多くなる事態を想定して、物品費の支出を抑制したため次年度使用額が生じた。次年度使用額は、単独では研究に必要な物品が購入できない程度の少額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の物品費に合算して使用する予定である。
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Research Products
(2 results)