2015 Fiscal Year Research-status Report
水素分離型反応分離プロセスを用いた二酸化炭素からの合成ガス製造
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15K00582
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
上宮 成之 岐阜大学, 工学部, 教授 (60221800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 学 岐阜大学, 工学部, 助教 (60538180)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メンブレンリアクター / ドライリフォーミング / 反応分離 / パラジウム膜 / 水素 / 二酸化炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
反応分離プロセス(メンブレンリアクター)を用いて,二酸化炭素をメタンと反応させて合成ガスに効率的に変換するシステムを開発することを目的とする。実現には,①反応場からの迅速に水素分離が可能な高透過性分離膜の開発および,②反応場に適した高活性触媒の開発が必要である。 パラジウムを従来以上に薄膜化するため,新規な薄膜化法を検討している。フォトリソグラフィーを用いた複合膜作製法では,樹脂基板上に無電解めっきによりパラジウム薄膜を作製し,その上にフォトレジストでさらに支持体層形成のためのパターン形成をし,めっきで形成したニッケル層を多孔質支持体層として使用する。最終的には,レジストパターンと樹脂基板を除去することでパラジウム複合膜が得られる。 作製工程の中でも無電解パラジウムめっきは分離膜の性能を左右する重要な工程である。無電解めっきは基板表面に凹凸を形成し,その表面に金属薄膜を積層する方法が一般的である。緻密性の高い薄膜を得るには凹凸を小さくする必要があるが,凹凸が小さいと密着不良となりピンホールやクラックが発生することが分かっている。そこで,樹脂基板の表面改質を行うことによって,物理的なアンカー効果だけでなく化学的結合が期待できると考え,プラズマ処理およびオゾンマイクロバブル処理を検討することにした。パラジウム膜厚の目標値を1 マイクロメーターとし,得られたパラジウム複合膜の水素透過能および耐久性を評価した。 また,CeO2などの酸素吸蔵能を有する担体を活用したドライリホーミングに高活性な触媒を開発する。CeO2は塩基性を示すともに格子酸素の出し入れが可能であり,酸素が関与する反応系でしばしば使用されている。本研究では,スチームリホーミングにおける触媒活性を比較参照しながら,メンブレンリアクターにおける低水素分圧の条件でも炭素析出しにくい触媒開発を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フォトリソグラフ法でのパラジウムの薄膜化では,樹脂基材の表面処理を選択することで,めっき析出面の表面粗さを調整できるとともに,めっきのための触媒核を化学的結合することが期待できる。従来法である過マンガン酸を用いた化学的処理法と比較しながら,プラズマ処理とオゾンマイクロバブル処理の効果を検討した。その結果,プラズマ処理とオゾンマイクロバブル処理ともに,樹脂基板の表面粗さを大きく変化させることなく,パラジウムめっきを行うことに成功した。とりわけプラズマ処理においては,基材に微細孔を発生させることはなかった。しかし目標とする1 マイクロメータのパラジウム薄膜ではピンホールを完全に無くすことができていない。プラズマ処理では,耐久性および緻密性に優れたパラジウムめっき薄膜が作製できており、プラズマ処理を採用することで目標とする膜厚への緻密薄膜化の可能性が示唆された。 ドライリホーミング用触媒開発では,性質の異なる三種類のCeO2を入手しルテニウムを担持して反応に供することで,触媒活性を評価した。その結果,高い塩基性を有するCeO2を用いたとき,二酸化炭素の吸着が強かったため生成した水素と二酸化炭素は反応し逆水性シフト反応が進行し,一酸化炭素と水が生成した。この結果から,ドライリホーミングには高い塩基性は必要ないといえる。一方,CeO2の格子酸素の寄与については確認中であり,低水素分圧下でも高活性を維持できる触媒に必要な特性にはついては引き続き検討を必要としている。
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Strategy for Future Research Activity |
樹脂基板をプラズマ処理することで,めっきの触媒核となるパラジウム超微粒子を高密度でかつ基板と密着性良く作製することができた。そこで,パラジウムの機械的強度を増加させて薄膜化するときに必要とされる,めっき開始時の成長過程を制御するために,めっき条件の検討を行う。 また水素が多孔質支持層を抵抗なく拡散できるようにするために,多孔質支持体層の開孔率を変えたパラジウム複合膜の作製を試みる。開孔率を高くすると機械的強度の低下を招くため,優れた耐久性と透過性を併せ持つ複合膜には開孔構造の最適化が必要である。水素透過能は開孔率に影響すると考えられるため,開孔率の目標値を50%以上とする。得られた複合膜の水素透過係数を算出し,文献値および支持層の無いパラジウム薄膜での透過試験結果と比較して,多孔質支持層の水素透過抵抗を評価する。パラジウム薄膜の支持層となる多孔質金属層構造の最適化は,高温水素雰囲気下での耐久性も考慮する必要があるため,水素透過試験前後に窒素透過試験を実施して水素透過選択性を評価する。併せて,細孔構造をSEMやポロシメーター等で評価するとともに機械的強度は常法の引張試験にて評価する。 CeO2のみならず,他にも炭素析出に効果的と推測される成分を添加した触媒をドライリホーミングにて活性試験を行う。低転化率で反応速度を算出し,酸素吸蔵サイトがスチームやCO2の活性サイトとして機能しているか検証する。酸素吸蔵量のみならず,酸素の吸放出速度をTGで調べることで反応機構の解明に役立たせる。酸素吸蔵能が寄与しない場合には,水素の酸化による水生成を抑制することに焦点をあてた触媒設計に方針転換をする。
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Causes of Carryover |
消耗品購入の一部に対して校費(運営交付金)を充当したため,当該年度の所要額とに差異を生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
触媒開発において平成27年度中の課題がまだ検討中であるため,平成27年度に消耗品を購入を予定していた予算で平成28年度に検討中の課題に関する実験を速やかに実施する。 パラジウムの薄膜化においては,平成27年度において樹脂基材の表面活性化に関する研究課題で予定より多くの時間を割いたため,平成28年度は目標とするパラジウム膜厚のパラジウム複合膜が作製できるよう,こちらも研究を加速する。
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Research Products
(1 results)