2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K00594
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
藤村 弘行 琉球大学, 理学部, 准教授 (20398308)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 白化現象 / サンゴ / 褐虫藻 / 抗酸化酵素 / スーパーオキシドディスムターゼ / 亜硝酸法 / 金属酵素 / 分別定量 |
Outline of Annual Research Achievements |
白化現象は、高水温で褐虫藻の光合成電子伝達系から活性酸素種(ROS)が発生することで生じる。通常、ROSは抗酸化酵素によって無毒化されるが、白化の際は対処しきれないほどのROSが生成していると考えられている。本研究課題は、造礁サンゴに抗酸化酵素の補因子である微量金属元素を濃集させることにより酵素の活性を向上させ、白化を阻止または白化の進行を延引させることができるかどうか評価することを目的とする。 今年度は抗酸化酵素活性定量法の検討を行った。スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)はサンゴの共生藻から生じる初期の活性酸素種を消去する抗酸化酵素である。その活性中心にはCu、Zn、Mn、そしてFeが使われており、Cu・Zn-SOD、Mn-SOD、Fe-SODの3種類のSODが存在する。亜硝酸法はこれらのSOD活性を測定する方法であり、ヒポキサンチンとキサンチンオキシダーゼによって発生するスーパーオキシドをヒドロキシルアミンと反応させ、生じた亜硝酸イオンを発色試薬によって検出・定量する原理による。この方法でシアン化物イオンを添加するとCu・Zn-SODは失活し、全SODから失活後の差分がCu・Zn-SODのみの活性量に相当する。 実験では標準試薬のSODを用いてヒポキサンチンおよびシアン化カリウム(KCN)の最適濃度を決定し、サンゴの組織および共生藻のCu・Zn-SOD測定を試みた。その結果、ヒポキサンチンは0.1mMおよびKCNは3.3mMが最適濃度あることが分かった。一方で、Mn-SODを失活させるとされるアジ化ナトリウム(NaN3)の実験では、50mMの濃度までNaN3を添加しても酵素活性は低下しなかった。したがってNaN3では分別定量できないことが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は予定していたMn-SODの分別定量を完遂することはできなかった。理由は、夏場の高水温により大規模なサンゴの白化現象が発生し、実験で使用するサンゴも白化し、死滅してしまったためである。現在、やっと回復し始めたサンゴの一部を大学の施設に移し、水槽内で管理することで今後の実験に備えているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
抗酸化酵素活性定量法を確立し、高水温下でのサンゴの酵素活性と白化耐性への影響評価を行う。造礁サンゴの生理的状態に影響を与えない条件で、微量金属元素を濃集させたサンゴを連続流水混合系で高水温に曝す。この実験系は小さなチャンバーに入れたサンゴを水温と光量、海水流量をコントロールしながら培養できる。これを使って、水温を25~33℃までコントロールし、共生藻の白化現象に関わるクロロフィル蛍光(電子伝達速度)、酸素量(光合成量)、共生藻密度の変化を測定し、白化の推移を観測する。また、サンゴそのものの生理状態は石灰化速度を測定することにより、サンゴの成長を見ることで確認する。そして、サンゴと共生藻の抗酸化酵素活性を金属SOD別に測定し、どのような金属をどの程度濃集させることで、SOD酵素活性が増加し、それによって白化の耐性や延引がどの程度可能となるのか評価する予定である。
|
Causes of Carryover |
サンゴの大規模な白化現象が発生したことにより、正常なサンゴを採取することができず、酵素活性定量法を確立することができなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は酵素活性定量法を確立する実験のために用いる。
|
Research Products
(6 results)