2016 Fiscal Year Research-status Report
発電と物質合成を同時に行う化学システムを目指したカーボンアロイ複合カソードの開発
Project/Area Number |
15K00600
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
尾崎 純一 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30214125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 孝文 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (50750155)
神成 尚克 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (90743336)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カーボンアロイ / ナノシェルカーボン / BNドープカーボン / 過酸化水素 / 酸素還元活性 / 表面塩基性 / ヘテロポリ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は燃料電池で発生した過酸化水素を酸化剤とした触媒を用い、電力と物質合成を同時に行う2種のカーボンアロイ材料の開発を目的とする。ひとつは、過酸化水素選択性を有するカーボンアロイ酸素還元触媒である。もう一つは、上記触媒により生成した過酸化水素を用いて有機物の酸化反応を促進する水溶性触媒物質を、安定に担持するためのカーボンアロイである。平成28年度は、ヘテロポリ酸酸化触媒を固定化するカーボンアロイ材料の調製を課題とした。 3種類のカーボン、未ドープカーボン(UN)、窒素ドープカーボン(N)、そしてホウ素・窒素ドープカーボン(BN)を担体として用い、水溶液からの含浸法によりヘテロポリ酸(PMo)を担持した。カーボン表面へのPMoの担持状態を変えるために、次の2つの処理を含浸後の試料に対して行った。ひとつは、不安定なPMoを除去する水洗処理(W)、もう一つはPMoの安定化を期待する400℃での加熱処理である。HW処理はいずれの担体に対しても、W処理よりも高い担持量を与えた。また、UN担体に比べてNもしくはBN担体の方が高い担持量を与えた。当初の想定通り、塩基性担体であるNもしくはBNドープカーボン表面にPMoが担持されやすいことを確認した。さらに、担持後の熱処理がPMoの固定化を促し、より高いPMo担持量を与えることも確認した。調製したPMo担持カーボンアロイのアリルアルコールのエポキシ化に対する触媒活性は、NまたはBNドープカーボンを担体にした場合のほうが高い。ただし、これらの担体試料を熱処理をすることによりエポキシ化活性に対する担体の影響は少なくなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度調製した窒素ドープカーボン(N)、ホウ素・窒素ドープカーボン(BN)および未ドープカーボン(UN)を担体とし、次の2つの検討を行った。(1)ヘテロポリ酸(PMo)表面への固定化条件の検討、(2)それらを触媒とするアリルアルコールの、過酸化水素を酸化剤とするエポキシ化に対する触媒活性を評価、である。PMoの含浸担持に対しては、UNに比べ、NおよびBNが高い担持量を与え、当初期待した塩基性表面のPMo担持に対する有効性が実証された。さらにPMo担持後に400℃で加熱処理をすることで、いずれの担体においても飛躍的な担持量の増加が認められ、熱処理がPMoの固定化に有効に作用することを確認した。 得られたPMo担持カーボンのエポキシ化反応に対する触媒活性の評価では、当初アルケンを用いたが反応溶媒への低い溶解度のため断念し、アリルアルコールを用いた検討に切り替えた。反応物の濃度変化より計算した転化率を活性として用い比較した結果、次の2点が明らかになった。(1)N、BNに担持したPMoの転化率がUNに担持したPMoのそれよりも高いこと。(2)熱処理により固定化したPMoが示した転化率はドープにかかわらずほぼ一定になること。なお、反応生成物は、ガスクロマトグラフィーの保持時間15 minに現れる成分(未同定)であった。 サイクリックボルタンメトリー(CV)法により、担持されたPMoの状態を検討したところ、いずれの試料も未担持PMoよりも高い還元電位を示しており、カーボン担体への担持が、PMoの酸化能力向上をもたらすことが分かった。N、BN試料ではPMo担持後の加熱処理に関わらず、CVの酸化還元電流の大きさは同じであった。一方、UN試料では、加熱処理により酸化還元電流は増大した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、以下の事柄が明らかになっている。 (1)チタン、コバルトを炭素化触媒として用いることで、H2O2生成効率の高いカーボンアロイ触媒を調製できる。(2)カーボン表面に窒素、ホウ素を導入し塩基性にすることで、ヘテロポリ酸(PMo)をより多く担持させることができる。CVから求めた担持PMoの還元電位は、遊離PMoよりも高電位にあり、担持が酸化力増加をもたらす。それらのカーボンに担持されたPMoは、アリルアルコールのエポキシ化を促進する。(3)PMoを含浸担持後に400℃で加熱処理することで、ヘテロポリ酸が固定化され、担持量が飛躍的に増加する。この時、CVから分かる還元電位は(2)の場合と同様に増加した。熱処理により、エポキシ化反応に対する活性には担体の影響が消滅する。(4)カーボン担体自体もエポキシ化反応促進に対する活性を持つ。 以上の結果を受けて、今後は生成物の同定および電気化学的H2O2生成反応との組み合わせを検討するとともに、カーボン自体のもつ酸化促進活性を検討する。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、研究に関わる消耗品に当てた予定金額よりも少額で実施できたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は研究の新たなステージに入るため、試薬、器具が新たに必要になる。これらの支出に充当する予定である。
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