2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K00646
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Research Institution | Matsue National College of Technology |
Principal Investigator |
福間 眞澄 松江工業高等専門学校, 電気情報工学科, 教授 (70228930)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 木炭 / EDLC / 中山間地域 / 賦活炉 / プロパンガス / 蓄電器 / 間伐材 / アルカリ賦活 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は,中山間地域で入手可能な杉等の間伐材から安価な蓄電器(1kWh以上)の製作を実現することである。27年度は,EDLC製造装置の主要設備となる賦活炉の実現が課題であった。中山間地域の小型工場で利用可能な賦活炉として以下の要求がある。 試作する賦活炉は,木炭活性炭を10kg/7時間(1日10kg)で製造できること,および,中山間地域では電気ヒーターのための受電設備を用意することは簡単ではないため,火災等の安全管理も簡単なプロパンガスを熱源として使用する。また,中山間地域では,廃棄物の処理ができないので廃棄物を出さない生産工程とする。 27年度は,プロパンガスを熱源として,管状炉から炉の試作を行い,少量(木炭2kg)であるがEDLCに利用できる活性炭が作れることを確認した。次に,申請時に提案したスクリューを用いた連続賦活炉の試作を行うこととした。しかし,耐熱性ステンレス(SUS310)を用い小型のスクリューの試作を行ったが目標の連続賦活炉を製作するとなると装置コストがかなり掛かることがわかった。目標とした数値目標を達成するには内部に攪拌用のブレードを有する回転式賦活炉がより適していると判断された。 400リットルの容量のステンレス製の炉心1.6kg/hのガスバーナー4台を搭載した回転式賦活炉を試作した。特に,賦活時の排気装置では,失敗を繰り返したが,いくつかの工夫により目的の機能を実現することに成功した。その結果,年度末には目標の2倍の20kg/7時間の製造能力を達成した。試作炉を用いて,約500個(B5版×厚さ2cm)のEDLCセルを試作し,市販の木炭(インドネシア産)では,蓄電容量と内部抵抗の平均がそれぞれ2.8Wh/Lと47mΩが達成できることがわかった。この結果から27年度に目標とした回転式賦活炉(キルン炉)を方式は変更したものの実現できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者がこれまで研究してきた電気二重層キャパシタ(EDLC)は,リチウムイオン二次電池と比較すれば,エネルギー密度はかなり小さい(2.8Wh/L)が,我が国の資源である木炭(もしくは竹炭),鉄板,紙,水酸化カリウム水溶液など,中山間地域でも入手可能で安価な材料を利用して製造が可能である。 申請者の所属する研究機関のある地域でも,中山間地域においては,少子高齢化,農業後継者不足など存続に関わる課題がある。申請者が研究してきたEDLCの特徴を考慮すると中山間地域の農業従事者でも,製造設備が安価に用意できればEDLCの生産も可能であると考えられた。農業従事者にとって農閑期に木炭を含む木炭を利用したEDLCの生産ができれば収入の一助となると考えられる。このEDLCは,20年以上の長期に渡り蓄電器として利用できると考えられるため,中山間地域における二酸化炭素の削減の取り組みとしても有効である。 申請者の研究してきたEDLCを中山間地域の農業従事者が生産することは先に述べた通り多くの社会的利点があると考えられる。中山間地域の農業従事者が生産を行うには,安価でコンパクトな設備が必要である。研究実績の概要に示した通り,プロパンガスを利用して乾燥状態の炭20kgを1日(7時間)でアルカリ賦活できる賦活炉を実現することができた(この乾燥状態の炭20kgを用いてEDLCを作製すると,60~80Wh程度の蓄電器が作成できる。60WのLEDパネル,6W程度のLED,およびその制御回路と組み合わせると通学路や公園等で利用できる屋外LED照明を中山間地域でも生産できる)。現在までの研究から安価でコンパクトな賦活炉の試作ができたことは,中山間地域でのEDLCの生産を行うに大きな前進であると考えている。試作結果から,賦活炉の設備費は2百万円程度で,中山間地域で小型の工場を実現するに妥当な設備費と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者の研究しているEDLCを,中山間地域で生産するためには,工場設置場所の環境を守ることや,海外からの資源をできるだけ利用しない工夫も重要である。 このEDLC工程は,以下の通りである。①木炭を粉砕して粒形が1mm以下の炭の粉を作製する。②①で加工した炭の粉と同じ重量の水酸化カリウム水溶液(50%濃度)を混錬する。③②を試作した賦活炉に入れ賦活する。④③の工程を経た炭の粉(活性炭)を水に浸漬して安定化させ,脱水する。⑤④で作製した炭の粉(活性炭)に水酸化カリウム水溶液(34%濃度)を所定量加え,攪拌して,型(B5版×深さ1cm)に入れ,プレス成型する。この工程でできた炭の板を分極性電極と呼ぶ。⑥分極性電極に電気配線を行う端子となる鉄板(集電極)を載せ,紙(セパレータ)で包む。⑦⑥で作製したものを2つ用意して,対向させ,容器(ガスバリア:ポリエチレンの袋)に入れシールする。ただし,集電極の一部は容器から外に突出させる。 上記の工程において,④の脱水と⑤プレス成型において,余分となった水酸化カリウム水溶液は,③の賦活炉の廃熱を利用して濃縮し,賦活剤として②の工程で再利用する。このようにすることで廃棄物を出さずにこのEDLCは生産できる。現状の賦活炉では,この余分となった水酸化カリウム水溶液の処理する機能を有していないので付加する必要がある。さらにより安価で安全なEDLCとするために水酸化カリウム(岩塩から製造)をより安価な水酸化ナトリウム(海水から製造)で試作することなどが今後の課題である。 賦活炉の改善とともに,中山間地域で生産された木炭(もしくは竹炭)を利用して1kWhの蓄電システムの試作も並行して進める。
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Causes of Carryover |
主に試作した賦活炉の問題点を明らかにするために,市販の木炭を利用してキャパシタを試作し評価を行い,製造条件と試作したキャパシタの特性の相関関係を調査してきた。試作に必要となる資材(物品)の購入に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額の14,228円は,次年度のキャパシタの試作に必要となる資材の購入に充当する。
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