2017 Fiscal Year Research-status Report
SEEA-CFと環境会計・評価による日中間の拡張I-O・マクロ会計・費用便益分析
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15K00655
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
氏川 恵次 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (90361873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 佳久 中央大学, 経済学部, 教授 (10342312)
高井 亨 公立鳥取環境大学, 経営学部, 准教授 (80622373)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国民経済計算 / サテライト勘定 / 産業連関分析 / 費用便益分析 / マクロ会計 / 環境会計 / 環境評価 / 中国経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
日中間の物的供給使用表・SEEAを推計して、これに基づく環境拡張産業連関・マクロ会計・費用便益分析モデルを構築した。組織を対象とするミクロレベルの環境会計、地域的・空間的な広がりをもつメソレベル及びマクロレベルの環境会計、そして、製品ライフサイクル(LCA)に基づく環境フットプリント(EP)の理論研究に基づき、経済・環境・社会という3つの観点から産業クラスター全体及び個別事業体がどのような価値をどのくらい生み出しているのかを見える化できるツールとしてメソ会計をモデル化した。 そして、事業体間及び地域外との取引関係を通じて、地域に波及する経済効果・社会効果・環境効果を部分的に検討した。メソ会計モデルと分析結果は、国内学会で研究発表したり、研究発表をもとに論文をまとめ、国内雑誌に投稿したりした。また日本と中国のエネルギー政策や再生可能エネルギー産業の投入構造について、資料収集・現地調査等を開始した。 環境評価・費用便益分析については、新たな理論的方法を検討するとともに、実証分析にも取り組んだ。第一に、昨年に引き続きSEEAでは包摂対象となってはいない、広い意味での環境についての評価を検討した。具体的には、環境資産への利他的な支払い意思額の測定方法を検討した。 第二に、持続可能性指標の中でもデカップリング指標をとりあげ、その新しい理論展開について検討した。解析幾何学的な発想から指標を構築することで、これまでの指標では十分に捉えることができなかった分離の状態の測定を可能とした。第三に、デカップリング指標では考慮できない包括的な持続可能性の問題を評価すべく、新規指標を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、日中間の物的供給使用表・SEEAを推計して、これに基づく環境拡張産業連関・マクロ会計・費用便益分析モデルを構築した。また、ミクロ・メソ・マクロレベルの環境会計及びEPの先行研究や事例に基づき、産業クラスターに適用できるメソ会計をモデル化することができた。収集データはメソ会計モデルに従って整理して、研究成果は説明会・意見交換会を通じて地域に還元するとともに、国内学会での発表や国内雑誌への投稿等を行った。現在のところおおむね順調に研究を進めることができている。さらに、日本と中国のエネルギー政策や再生可能エネルギー産業の投入構造について、資料収集・現地調査等を開始した。 環境評価・費用便益分析については、第一に、より広い意味での環境資産についての選好をあきらかにするとともに、その評価方法を検討した。具体的には環境資産の他者の利用への支払い意思額の推計方法を、ヘドニック法の観点から検討した。成果については、現在、投稿準備中である。第二に、持続可能性指標の中でも特に、デカップリング指標に内在する問題点を理論的に整理し、解析幾何的アプローチに基づく新たな指標を開発した。これらの成果は現在、投稿準備中である。第三に、上記二つの研究では環境と経済の側面のみを対象としていたが、広く持続可能性を評価することも必要である。そこで、SDGsの多様な持続可能性目標に対して、恣意的な重み付けを行うことなく評価を行なうことが可能なアプローチを検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記モデルに基づき日中の経済成長とエネルギー消費の要因分解分析を行い、再生可能エネルギー部門を新設して、エネルギー政策の波及効果分析、マクロ会計のシミュレーション、費用便益分析を行う。継続的なフィールドワーク調査を行うとともに、地域の生産を担う事業者への調査を本格化させる。部材の利活用が地域の環境の健全性の保全にどのように結びつくのかを検討する。また、メソ会計モデルに基づきケーススタディの事例として、製品LCAの観点に基づくEPの計算シミュレーションを行うように展開する。これらの調査により、部材および廃材の利活用が、事業体間及び地域外との取引関係を通じて、地域・国内・海外に波及する経済効果・社会効果・環境効果を検討することができるようになる。また、EF計算のシミュレーションは、日本の特質を反映した国産材のデータベースとなり、日本企業におけるEPの導入の促進に貢献できる。そして、国内外の学会・研究会での研究発表を行い、国内外の研究者との意見交換を通じて、質の高い学術論文の執筆を目指している。 環境評価・費用便益分析については、「広い意味での環境資産についての評価方法」や「新たなデカップリング指標」についての理論的検討は終了したため、多様な地域を対象とした実証分析の結果を含めて、論文として取りまとめる。また、SDGsのように多様な持続可能性目標に対して、目標群に対する恣意的な重み付けを必要とせず、かつ貨幣評価を必要としない指標を構築しており、この指標についての実証分析を進め論文として取りまとめる。
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Causes of Carryover |
(理由)まず、平成29年度において、当初予定していた旅費等の内、とくに国内での資料の収集および現地調査、各種の学会・関連分野における研究会への参加および報告等を、当初の計画以上に、複数回行うこととなったために、前倒し支払請求の必要性が生じた。これに伴い、平成29年度は、前倒し支払請求額100,000円の交付を受けた後に、複数回のフィールドスタディや学会・研究会の参加および報告等を実施した。しかしながら、当初の旅費の見積もりと実際の支出額にずれが生じたために、前倒し支払請求額100,000円にたいして、5%弱の4,680円が次年度使用額として生じることとなった。 (使用計画)まず、平成30年度の研究実施計画としては、概ね当初の予定通り推進する。とくに、前倒し支払請求に伴う変更にかかわる内容としては、既に情報収集を一定程度行ったため、国内の各機関における資料収集および関連分野の研究会における資料収集・ヒヤリング調査、国内学会での参加および報告を差し控えて、研究成果の公表をはじめとする内容の具体化へ、より注力することとしたい。ただし、上記の通り、前倒し支払請求として申請した金額について、当初の見積もりと実際の支出額について差額が生じたことで、次年度使用額が発生したため、この分については、上記の国内の機関での資料収集、学会・研究会での情報収集等を通じて、研究の精度をより高めることとしたい。
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Research Products
(4 results)