2016 Fiscal Year Research-status Report
食生活のスタイルが腸内菌と生活習慣病の発症リスクに及ぼす影響について
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15K00820
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
片岡 佳子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 教授 (40189303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 明子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (70707900)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Clostridium / 糞便菌叢 / 成育段階 / 高脂肪高ショ糖食、 / 脂肪肝炎 / 脂肪肝 / インスリン抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
どの時期の食餌内容が生活習慣病の発症リスクに大きく影響するのか、また食餌内容の改善によりそのリスクを低減できるのかを明らかにすることを目的として、様々な成育段階のマウスに高脂肪高ショ糖食(HFHSD)を投与し、肥満、脂肪肝、脂肪肝炎への影響を検討している。昨年度は、離乳期(3週齢)から8週齢までHFHSDまたは通常食で飼育し、8週齢時に餌を継続またはもう一方に切り替え、肥満、脂肪肝、脂肪肝炎に対する影響を以下のように検討した。幼若期に通常食を与え8週齢時にHFHSDに切り替えると、体重の増加度が上がり、空腹時血糖が上昇する傾向が見られた。これは、幼若期から実験期間中HFHSDを継続した場合よりもむしろ高い傾向にあった。一方、幼若期にHFHSDを与え8週齢時に通常食に切り替えたマウスでは、8週齢以降に体重や空腹時血糖の上昇は見られなかった。これらのマウスを48週間後まで長期に飼育し、グルコース負荷テスト、血清中AST, ALT, コリンエステラーゼ(ChE), 総胆汁酸の測定、肝臓内の脂質の定量を行った。いずれも、幼若期の食餌が通常食かHFHSDかによる差は見られず、8週齢以降にHFHSDを摂取させた場合に、通常食コントロールより高い値を示した。この期間中の糞便菌叢の変化についてT-RFLP法により検討中である。 平行して行っている食餌内容への介入の影響を検討する実験では、食物繊維を豊富に含む食品成分Aを混餌投与すると、HFHSDによるインスリン抵抗性の出現が抑制され、HFHSD投与によるClostridium IXの増加が抑制され、Bifidobacterium が増加した。Clostridium IXの菌量と脂肪肝の指標であるChEとの間には有意な正の相関があった。抑制効果には個体差があり、そこに腸内菌叢の構成や機能の相違が関係している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C57BL/6マウスに高脂肪高ショ糖食を与えて肥満を誘導するモデルを利用して、どの時期の食餌内容が生活習慣病の発症リスクに大きく影響するのか、また食餌内容の改善によりそのリスクを低減できるのかを明らかにしようとしている。インスリン抵抗性の評価、脂肪肝および脂肪肝炎の評価の方法については今後も上記の実績報告書に記載のとおりに行う。オイルレッド染色による組織標本上での評価を試みたが、標本作製部位のみの観察よりは肝臓全体の脂質量を定量するほうが今後は良いと考えている。平成28年度に予定していた抗炎症作用や抗酸化作用を持つ食品成分の混餌投与の実験については、Terminal-RFLP 法(長島法)による半定量的比較、および菌種特異的リアルタイムPCR法による定量により、群間の菌叢の相違を検出できており、今後も同様の手法で菌叢の解析を進め、肥満から脂肪肝炎に至るまでの発症リスクに対する菌叢の影響を検討する予定である。(8週齢の前後で餌の切り替えを行った実験のマウス糞便菌叢については、T-RFLP法における制限酵素処理の時間が不十分であった可能性があるため、現在再試験中である。) 従って、計画全体としては概ね予定通りに進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究結果から、ClostXIと脂肪肝、脂肪肝炎との関連性が考えられた。この菌群は、腸管内で一次胆汁酸を二次胆汁酸に変換する酵素活性を持つ腸内菌であり、二次胆汁酸は肝炎や肝臓がんの発症に関与することが報告されている。従って、平成29年度はこの菌種の菌数の変化にも着目して研究を進める。また、必要に応じて次世代シークエンサーによる16Sメタゲノム解析を取り入れる。
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Research Products
(3 results)