2017 Fiscal Year Research-status Report
香辛料によるGABA合成酵素の活性化と減塩そして塩味情報伝達機構の解明
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15K00872
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
植野 洋志 龍谷大学, 農学部, 教授 (30241160)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 減塩食 / 塩味増強剤 / 塩味情報伝達機構 / GABA / クロライドイオンチャンネル / 香辛料 / 味蕾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,グルタミン酸を代謝してγ-アミノ酪酸(GABA)を合成するグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)がIII型味蕾細胞に発現することを見出したことよりスタートした.III型味蕾細胞では,5種類ある味質(五味)のうち,塩味と酸味の受容体を備えているとされている.GABAの受容体はGABAAがクロライドイオンチャンネルがた受容体であることより,塩味に関与することが考えられる.我々は,GAD活性制御因子を香辛料より見出し,GAD活性を活性化する因子が塩味増強と相関関係にあることを見出した.本研究では,塩味増強物質のさらなる探索,そのような物質を使った減塩食の開発,そして,細胞レベルでの塩味の情報伝達機構を明らかにしようとするものである.本年度は,GADのアイソフォームであるGAD67と直接相互作用するタンパク質(グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ,GAPDH),GAD67およびGAPDHと相互作用するタンパク質(論文執筆のため,現時点ではXと報告)を見出し,それぞれの意義を探求しているところである.また,減塩食としては,パン,汁物を対象に,従来のレシピで用いられている塩濃度を半分に減らした減塩食を試作した.それらは,官能試験により,塩味と従来品との比較において味質を評価した.同様に,減塩プラス香辛料成分を添加した減塩食も試作し,それぞれ官能試験に供し,塩味と味質を評価した.その結果,減塩の効果はパンでは観察されたが,汁物では不明瞭な結果であった.汁物には,調味料など多くの味覚に刺激をあたえる物質が混在し,単純に香辛料の塩味増強効果を引き出せる訳ではないようである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・塩味の情報伝達機構について:グルタミン酸デカルボキシラーゼのアイソフォームであるGAD67と相互作用するタンパク質を表面プラズモン共鳴法で探索した.GAD67のN末端領域と比較のためGAD65のN末端領域の疎水性を示す部分に相当するペプチドを合成し,それをリガンドとして,サル脳抽出液中に含まれるペプチドに親和性を示したタンパク質を同定した.さらに,全長型GAD67を用いて同様に親和性を示すタンパク質を同定し,同じものが得られた.そのタンパク質はGAPDHであり,糖代謝に関与するタンパク質であるが,どうしてGAD67と結合するのかはまだ不明である.現在までに,GAPDHとGAD67の両方に親和性を示す第二のタンパク質も同定している(論文執筆中). ・塩味増強効果を示す香辛料(抽出物)は引き続きスクリーニング中である. ・これまでにGAD67の酵素活性を指標として探索してきた香辛料抽出物のもつ塩味増強効果を示したものを順次減塩食の開発につなげている.パンの場合,おおむね効果が確認できるが,汁物に関しては,実験結果が不明瞭となっており,さらなる検討が必要と感じている.
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では,タンパク質ータンパク質間相互作用を測定することで良好な結果を得ている.引き続き行ってゆきたい.GAD67タンパク質は,大腸菌・酵母に組み込んだものを発現させ,精製して用いてきた.かなりの手間が必要であり,まだ安定な保存方法を見出していない.今後の課題である.精製にはGSTあるいはHis-tagをN末あるいはC末につけてあるので,アフィニティカラムにて行っている.いづれ,一つの発現系に絞る必要があるが,基質特異性や活性条件など検討すべき課題も多い.減塩食に関しては,調理の専門家と相談して行ってゆくつもりである.
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Causes of Carryover |
研究目的の中で,塩味の情報伝達機構に関して,もう一歩で論文投稿まで来ている.そのために最後の実験と出版経費として次年度使用額を翌年度に持ち越す必要がある.
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