2016 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の幸福感向上を目指した遠隔共食会話の構造分析と心理効果の対応関係の解明
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15K00887
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
徳永 弘子 東京電機大学, 情報環境学部, 研究員 (00747321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋谷 直矩 山口大学, 国際総合科学部, 助教 (10589998)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 共食 / コミュニケーション支援 / 遠隔会話 / 親子間会話 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,1) 遠隔共食実験データの解析,2) 追加データの収集 3) 食事環境が人の食事動作に及ぼす影響についての論文化を行った. 1) 昨年までに収集し終えた二組の親子の実験データを解析した.協力者の生活記録に記述された2か月間全180食における食事中の会話内容を調べ,さらにインタビューから,遠隔共食の影響と推測される心的変化の発言を抽出し,分析した.その結果,特に高齢の親にとって,子供と遠隔共食を行うことが楽しみであること,また定期的な共食が夫婦の日常の話題を豊富にしていることが示された.本分析結果は,電子情報通信学会,日本食生活学会,日本認知科学会において発表した. 2) 昨年,実験に協力頂いた二組の親子は,実の母娘,父娘の協力者らであった.遠隔共食は,義理の親子でも可能であるため,本年度は姑嫁の関係にある親子に協力を依頼し,2カ月のデータ収集を行った.3組の異なる関係性の親子によるデータを観察することによって,遠隔共食の意義や効果は,個々の家族特性やコミュニケーション意欲に強く依存することが分かった.各親子それぞれの心的内部に寄り添った,遠隔共食の在り方を検討する必要性が確認できたため,次年度以降はそれぞれの親子のケーススタディを中心に分析するという新たな課題を発見した. 3) 昨年度までに分析を終了した孤食と共食における食事環境が人の食事動作に及ぼす影響について,研究成果をまとめた.本論文は日本食生活学会誌に投稿し掲載された.また,本研究はWeb雑誌JBpressにも掲載されるなど公表の場を得た.本分析で明らかにした,共食の場が人に社会的行為を創発させる場としての機能を持つことは,今後の遠隔共食研究に重要な意義をもたらすものであり,今後は対面共食と遠隔共食における人の行動分析と社会的行為の関連を明らかにするという,新たな指針を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年までに収集したデータの分析から,本研究が目的とする,遠隔共食会話と高齢者の心理的効果に対応関係があることが示唆されている.それらの示唆に基づき,本年度においては,協力者からの生活記録,映像記録,インタビュー会話に対し定量的,定性的な分析を追加しており,課題遂行に向け当初の計画通りに進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
実験協力者から得た生活記録は主観的,かつ詳細な日々の記録が記述されている.これらを定量的なデータとして扱う為,日記の記述と食事内容について,第三者評価を行い,客観的な数値に示す.これにより,遠隔共食が協力者の心的変化とどのような関係にあるかを統計解析によって明らかにする.一方で,遠隔共食の効果はそれぞれの家族関係,個人の事情により異なることも示唆されているため,個々のデータを事例的に分析し,家族の特性と,共食の在り方,心的効果の関連について明らかにしていく.
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Causes of Carryover |
研究代表者と分担者間のディスカッションに必要な旅費を計上していたが,本年度においては遠隔システムを用いて議論を行った.そのため旅費の執行が予定額に至らなかった.またクラウドサービスを利用した情報共有により,議論効率を上げ,実際の行き来による旅費の予算執行を抑えることにした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は最終年度に当たるため,昨年執行を控えた旅費を,成果発表のための出張にあてる.すでに,電子情報通信学会,日本認知科学会,日本心理学会での発表を予定しており,研究成果を広く公表することに努める計画である.
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Research Products
(8 results)