2016 Fiscal Year Research-status Report
子音を含む音声を生成する声道模型と音響教育への応用
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15K00930
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
荒井 隆行 上智大学, 理工学部, 教授 (80266072)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 科学教育 / 音響教育 / 音声生成 / 声道模型 / 可視化 / 子音 / 母音 / 成人・子ども |
Outline of Annual Research Achievements |
音声生成の仕組み等を分かりやすく理解するため、子音と母音に関し模型を中心とした教材・教育プログラムの開発等を引き続き進めた。子音は、鼻音・接近音・破裂音を出す声道模型を開発し、摩擦音も検討を再開した。母音は、日本語に加え2015年度のエストニア語に引き続き、ニーズの高い英語も対象とし範囲を拡大中である。 複数の子音を出す一体型模型については国際会議INTERSPEECHで報告し、高い評価を得た。また、我々の声道模型と似た展示のあるサンフランシスコの科学館Exploratoriumを訪問し、開発者と情報交換する機会を得た。そして、共にルーツが千葉・梶山著「The Vowel」であることを確認(The Vowelについては、日本音声学会90周年記念シンポジウムにて講演)。 日本語5母音の声道模型を効率的・効果的に展示する工夫を進め、肺の動画をプロジェクションマッピングする手法と組み合わせ、渋谷区の「こども科学センター・ハチラボ」にて展示(肺のモデルは日本音響学会英文誌ASTのShort Note、展示の様子は同学会研究発表会にて報告)。国立科学博物館のサイエンススクエアでは、声道模型やディジタル・パターン・プレイバック等の展示を実施し、ワークシートも活用(展示の様子はAST誌等で報告)。 アメリカMITとEastern New Mexico大学に模型を送り活用と評価を実施。Web公開中のAcoustic-Phonetics Demonstrations (APD)のサイトからは声道模型の3Dプリンタ用ファイルの公開を開始。声道模型とAPDが、日本音声学会学術研究奨励賞を受賞するに至った。その他、声道模型を中心とする音響教育と日本音響学会音響教育研究会の活動状況は、AST誌Invited Paper・Invited Review及び日米音響学会ジョイント会議の招待講演数件で報告。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子音と母音の両方を生成できる声道模型として、舌の前半分が折れ曲がるタイプに鼻腔と可動式口唇ブロックを取り付けた模型を開発したが、子音としては鼻音、接近音、破裂音を出せることを改めて確認した。摩擦音についても、以前開発した/s/などのモデルを見直し、試作や検討を再開している。これにより、本研究として掲げている「母音と子音」の両方について、一定の目途がついたことになる。同様に、母音と子音の両方をカバーする軟らかい舌を伴う声道模型については、舌の形状や素材などについてさらなる検討を続けている。可動するブロックを複数組み合わせた声道模型としては、梅田・寺西モデルを含め、PC制御のさらなる可能性を模索している。対象とする音についても、日本語5母音やエストニア語9母音に加え、英語やその他の言語の母音を作り始めている。 「こども科学センター・ハチラボ」での展示においては、シンプルな形状の日本語5母音を、リード式音源や空気ポンプと組み合わせた。リード式音源については以前から開発してきたものの中で、最も音が安定的に出すことができるものを3Dプリンタなどで効率的に、かつ、最大限の音質で提供できるようにした。同時に、空気ポンプから供給される「呼気」が効率的に音源の振動になるような工夫を繰り返した。さらに、博物館・科学館などで工作キットとして配布できるようなスライド式声道模型を様々な素材で組み合わせ試作中である。 これらのプロトタイプの試作・評価を繰り返す中で、3Dプリンタの役割はますます大きくなってきている。特に各種声道模型の試作、舌やその他の調音器官の造形、リード式音源の主要部分の造形など、その利用範囲は広がりつつある。そして、一部の母音セットについては、3Dプリンタ用ファイルをAPDのウェブサイトから無料で公開を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
子音の中でも摩擦音の模型を継続的に改良する予定である。さらに、英語の母音に対する声道模型もその形状を定め、気軽に3Dプリンタで出力できるよう、ファイルを準備する方向で進める。博物館・科学館での展示への応用等を見据え、見る人が人間の声道をイメージし易く、かつシンプルに見せるための模型を開発中である。そのためのアプローチとして、すでに開発済みの頭部形状模型や屈曲式模型の中でも音質が良く明瞭性が高いものをベースに改良を重ねる方法の他、千葉・梶山著「The Vowel」にある人間の実測データに立ち返り、そこから3次元形状を復元する方法を試す。科学教室等での工作や博物館・科学館等で配布ができるように、スライド式声道模型をシンプルなパーツで実現、それらを組み合わせて完成できるような工作キットを完成させる。また、梅田・寺西モデルを中心に、PC制御によって声道形状をコントロールし、連続発話や歌唱の可能性もより深く探る。そして、それら主要な研究成果や教育上有益な情報・デモンストレーション・動画などをWeb上で公開中のAcoustic-Phonetics Demonstrations (APD)にてさらに追加公開することで、成果を社会に還元し、より多くの方々に利用してもらうことを予定している。
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Research Products
(17 results)
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[Presentation] 千葉勉が遺したもの2016
Author(s)
荒井隆行
Organizer
日本音声学会 90周年記念シンポジウム
Place of Presentation
早稲田大学(東京都)
Year and Date
2016-09-17 – 2016-09-18
Invited
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