2015 Fiscal Year Research-status Report
技術の社会実装教育・研究において学生の創造性や主体性を伸ばす安全実践教育の提案
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15K00963
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 通子 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特任研究員 (00537037)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 社会実装教育 / アクティブ・ラーニング / 体験型安全教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の産業競争力向上のためのイノベーションを担う技術者教育において、特に社会連携型アクティブラーニングに適用するための「安全性を重視したイノベーション力」と「リスク管理・安全行動能力」を効果的に育成する実効性の高い総合的な安全教育を提案することが本研究の目的である。 今年度は、聞き取りを中心に、技術者教育における社会実装教育やアクティブ・ラーニングにおける安全教育の実施について実態調査を行った。 その結果、以下のことが明らかとなった。(1)社会実装教育やアクティブ・ラーニングの実施は組織の方針に従って導入し始めた段階の学校が多く、安全教育まで着手されていないこと、(2)一部の学校では個別の授業ではアクティブ・ラーニングの実績があるにもかかわらず、学校の方針や担当者の不在、ノウハウの情報が少ないなどの困難から実施状況が後退しており、それに伴って安全教育も後退していること、(3)産業界ではここ数年、労務災害や事故が微増しており、個々の能力育成に重点を置いた教育理論を取り入れた新しい安全教育の必要性が高まってきていること、(4)アクティブ・ラーニング実施校では安全に関する関心が高いにも関わらず国内外先進事例の情報がほとんどないこと 等である。 この結果より、アクティブ・ラーニングへの移行期への導入がしやすい汎用的なツールによる安全教育の必要性を感じた。そこで、クリッカーを利用した教育プログラムの構築に着手した。さらに、研究成果を共有するだけでなく、情報交換を活性化させるためのプラットホームとしてのHP設計に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実態調査の結果、技術者教育におけるアクティブ・ラーニング自体の導入について、各校、未だ十分に構築されておらず、組み込む安全教育についても具体的な検討に入っていない段階であるため、課題の抽出までには至っていない。 また、アクティブ・ラーニングの実施において、安全教育のプライオリティは必ずしも高くはなく、学校や教員自身のリスク管理に対する感性も低いことから、当初、予定していた種々の安全教育を試行するには至らないと考えている。 しかしながら、アクティブ・ラーニング実施の計画が各校で進んでいる中、教育現場の第一線では、様々な安全に関する事例が出てきており不安が高まっている状況については把握できた。また、産業界では、従来のマニュアル遵守型、知識中心の教育への限界から、新しい形の安全教育の必要性が高まっており、本研究の目的とする安全教育の提案や学校と産業界の接続教育に対しては一定の理解と期待があることが明らかとなった。 そこで、1年目である平成27年度は、すでに具体的な教育プログラムを実施している先進的な学校と情報交換を行い、汎用的なツールであるクリッカーなどを活用した安全教育プログラム構築に着手した。これをいくつかの教育現場に提供し、平成28年度の2年目以降の研究につなげていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
実際に行われている安全教育プログラムの事例が少ないことが明らかとなったため、2年目である平成28年度は予定通り海外の先進事例調査を実施し、その結果を盛り込んだ具体的な安全教育プログラムの構築と試用を進める予定である。 具体的には、当初、想定していたような、すでに実施されているアクティブ・ラーニングと、新しい安全教育を組み合わせるのではなく、安全教育それ自体をアクティブ・ラーニングとして構築することにより、まず導入の垣根を低くする。その後、教育効果等を測る手法、手段、時機などを検討していくこととする。 各種の学校、大学等でアクティブ・ラーニング導入の機運はかなり高まっており、導入のスピードも速いと思われることより、導入時に安全教育の組み込みが可能な教育プログラムの提案を行う予定である。 HPの整備は当初、研究成果を広く共有することを目的にしていたが、社会実装教育やアクティブ・ラーニングへの安全教育導入のための情報交換のプラットホームとしての機能を付加したものとしての構築に着手しており、H28年度前半には活用を始める予定である。
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Causes of Carryover |
HPの整備は、研究当初の計画では、研究成果を広く共有することを目的にしていた。しかしながら、H27年度の実態調査の過程で社会実装教育やアクティブ・ラーニングの導入が予測より進んでおらず、よってそこに組み込む安全教育にまで至っていない事例がほとんどであった。 そこで、HPは研究成果の発信のみならず安全教育導入のための情報交換のプラットホームとしての機能を付加したものとして計画をし直した。業者による見積もり金額が約30万であることより、平成28年度前半の完成に向けて次年度使用額としたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
安全教育導入のための情報交換のプラットホームとしての機能を付加したHP構築は、すでに作業のほとんどが終了しておりH28年5月中には業者への支払いを済ませ、公開をして研究推進のための活用を始める予定である。
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