2015 Fiscal Year Research-status Report
失敗から学ぶ日越ビジネスコミュニケーション指導法の開発
Project/Area Number |
15K01018
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
西谷 まり 一橋大学, 国際教育センター, 教授 (80281004)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 失敗 / 不安 / ベトナム / 異文化対処能力 / PAC分析 / 口頭発表 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、大学院経営学修士コースにおける集中日本語コースの口頭発表の授業で、以下のような事前調査を行った。対象者である19名の学生を2つのグループに分け、実験群には、失敗から学ぶ指導を行ったほか、口頭発表後に教師が行うフィードバック時に、失敗を意識させ、励ます文言を加えた。事前と事後の変化を見ると、失敗から学ぶ指導を行った実験群では、失敗を肯定的に捉えられるようになったことが統計的に明らかになった。 次に、ベトナムの日本企業で働くベトナム人と日本人を対象に、失敗観尺度と異文化対処能力尺度を用いた量的調査を行った。その結果、以下のことが明らかになった。まず、異文化対処能力が高い人は失敗を肯定的に捉え、失敗から学ぶことができる。次に、ベトナム人のほうが失敗を肯定的にとらえる傾向が高く、日本企業経験、日本語学習歴、来日の有無、年代、性別で異文化対処能力と失敗観に違いがみられた。 さらに、ベトナムの日本企業で働くベトナム人と日本人の不安や失敗の捉え方について、明らかにするために、ベトナム人2名、日本人2名を対象にPAC分析の手法を援用したインタビュー調査を行った。その結果、ベトナム人も日本人もお互いの働き方の違いに不安を感じたり、失敗した経験を有していることが明らかになった。さらに、失敗を乗り越える、また、未然に防ぐためには、適切な説明、指示が必要であることも示唆された。さらには、日本で働いた経験のあるベトナム人は、日本式の働き方を感覚で理解していること、しかし、そのために同僚のベトナム人との間で葛藤を抱えていることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベトナムにおける質問紙調査とインタビュー調査を完了した。質問紙調査として、異文化対処能力尺度13項目、失敗観尺度22項目について調査を行った。調査期間は2015年8月で、調査対象者はベトナム人123名、日本人63名である。2016年度の異文化間教育学会で質問紙調査の結果の発表が決定している。インタビュー調査はPAC分析の手法を援用し、日本人6名、ベトナム人6名を対象とした。そのうち、日本人とベトナム人2名ずつについて2016年度発行の一橋大学国際教育センター紀要にPAC分析の結果を考察した論文を掲載する予定である。また、調査だけにとどまらず、日本の留学生対象の授業において、失敗から学ぶ指導を行って効果検証を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
ベトナムにおいて行ったPAC分析調査の追加調査を行い、ベトナムで働く日本人駐在員とベトナム人社員の失敗と不安に関する変化を縦断的に検証する。 2016年度の夏休みを利用して、カンボジアにおいても同様の調査を行い、ベトナム人との比較を行う。 また、新たな研究手法としてFishWatchrの活用を準備している。FishWatchrはディスカッションの観察を支援し、ディスカッション教育に役立てるためのツールであり、目の前のディスカッションに対して、学習者が簡単に注釈づけしたり,その結果を視覚的に閲覧できるもので、協調学習の観察、日本語教育、議事録作成支援などでの活用が可能である。FishWatchrを利用してベトナム人と日本人の実際のビジネス場面の評価を行うために、日本において予備実験を行う予定である。
|
Research Products
(2 results)