2015 Fiscal Year Research-status Report
繰り返し学習に対応したLMSの開発と学習時間の分析
Project/Area Number |
15K01092
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
渡邊 博之 日本大学, 工学部, 教授 (40147658)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 繰り返し学習 / 学習時間 / マハラノビス距離 / MTS法 / 英語 / コースウェア / LMS |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題とそれに関連して,次の研究実績を得ることができた。 (1)eラーニングで用いられるLMS(Learning Management System)のひとつにMoodleがあるが,SCORM2004に準拠はしているものの完全対応ではないため,これまでJAVAアプレットを用いたSCORM対応のLMSを開発してきた。しかし,JAVA8の環境ではアプレットを使用することができない問題点がある。PC以外にもスマートフォン端末で教材を利用することを考えると,アプレットを使用しないLMSを開発する必要がある。本研究では従来のJAVAアプレットではなく,PHPを用いたLMSを開発し,多くの端末で利用できることを確認した。 (2)コースウェアを分析する場合,MTS法(Mahalanobis Taguchi System法)を用いると単位空間の作成が問題となる。本研究では英語の繰り返し学習型コースウェアを対象に,学習時間に含まれる合格時間から単位空間を作成している。英単語では混合式を対象に,混合式の合格時間を単位空間として学習時間を分析し,選択式の合格時間で混合式との差異を求めている。また,英文法では記述式を対象に,音声ありの合格時間を単位空間として学習時間を分析し,音声なしの合格時間で音声ありとの差異を求めている。 (3)男女間の脳の構造では左脳,右脳を繋ぐ脳梁の形や大きさが違う構造の違いから,男性は論理的思考をつかさどる左脳を,女性は記憶や直感をつかさどる右脳を使うことに長けている。本研究ではクレペリン作業を対象に,脳波計を用いて男女間における左脳,右脳の使われ方の違いを比較している。また,電位マップを用いて回答中の時間経過に対する各部位の働きを分析し,考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」の(1)から(3)に対して,次の進捗状況にあるため,おおむね順調とした。 (1)JAVAアプレットの代わりにPHPを利用したLMSを開発した。この結果,システムのLMSクライアントを代えるだけで,LMSサーバは従来のサーバをそのまま活用できることができた。JAVA8の端末ではIE11,Chrome,Android4.4搭載の各ブラウザで,SCO教材の提示から学習データの保存までが動作可能であることを確認した。 (2)英単語と英文法の学習時間をMTSで分析した。この結果,英単語ではマハラノビス距離から,選択式に比べて混合式の学習時間は長いが,問題形式によらず,一部の英単語と熟語のSN比の利得が大きいことを明らかにした。また,英文法では記述式の学習時間を分析し,音声の有無による合格時間の差異を求め,SN比の利得からBe動詞より一般動詞,現在形より過去形,YES/NO疑問文よりWH疑問文の学習時間が長く,学習時間では音声を何度も聞くが,合格時間では音声なしで回答していることを明らかにした。 (3)クレペリンを対象に,男女の脳波を測定し,比較した。この結果,同じ右利きでありながら男女間の左脳と右脳の使われ方に違いが生じることを明らかにした。女性は男性に比べ脳梁の結びつきが密なことから, 左脳も右脳もバランスよく活発に働いたと考えられる。右利きは脳梁の結びつきが女性に比べて密でないことから,左脳しか活性化されないと考えられる。男性両利きにおいては男性右利きに比べ,日常生活の中で左右両方の手を比較的多く使うため男性右利きに比べ, 左脳と右脳のどちらも活発な働きをしたと考えられる。また,女性右利きよりも男性両利きの方が時間経過に比例して,脳が活発に働くため,クレペリン作業における平均回答数が男性両利きの方が多いことを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」の(1)から(3)に対して,今後は次の研究を進める予定である。 (1)LMSの開発において,シーケンシングルールやナビゲーションの一部の機能はSCORMに対応化した。今後はSCORMを実装してない一部の機能,例えば,回答の暗記を防ぐためにM系乱数を使用した問題のランダム提示機能などを開発する予定である。 (2)コースウェアの分析において,MTS法は単位空間を特定の問題形式や特定年度の学習時間から作成するのではなく,分析対象の学習時間に含まれる合格時間から作成するため,単位空間の全学習者数を考える必要がない利点を示した。今後は得点について,繰り返し学習型と演習問題型のコースウェアを分析し,繰り返し学習型と演習問題型の差異を比較する予定である。 (3)男女の右利きと両利きの右脳・左脳の働きの違いを明らかにした。今後は男女の左利きの測定を行うと共に,男性右利きが左脳と右脳を共に活性化させるための方法を考える予定である。
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